刑事の同居人【神 谷 将 人】

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side.K

『大好きな人を解剖される気持ちってわかります？』

｢…………｣

事件の終息を嘲笑うかのように、事件は加速する。こうしてまた、新たな被害者が出た。

手塚菜奈

事件の中心に居たことは確かだ。ゲームにも参加していた。それは自分がよく知っている。手塚菜奈は事件の犯人探しを行い、もしかしたら確信に近いところまで触れたのかもしれない。手塚翔太の証言では、泣きながら何かを迫られる姿が映っていたという。拷問を受けた可能性は否めない。残念ながら重要な位置その映像の復元は難しそうだ。

声を荒らげて水城に掴みかかった手塚翔太を思い出す。

彼女の死に憔悴しきった手塚翔太に罪悪感が無かったといえば嘘になる。しかしそれ以上に憎悪を滲ませて放たれた一言が、繰り返し耳元から聞こえてくるような気がした。

大好きな人

居ないな、と思いながら脳裏で過ぎる姿に、思わず溜め息が出た。違う、あいつは、そういうのじゃない。大好きなんて稚拙な感情を傾けるほど、俺もあいつもガキではない。

──AA

好意的に思っているのは確かだ。でもそれは区切りの付いた、容易に手放せる感情だ。俺達は恋愛に欲をかくことはなく、ただ互いが丁度いい存在のまま、そうずっとやってきた。

しかし、もし、彼女が誰かに殺害されたら。

高所から転落していたら、頸動脈を切られ血の海に伏せていたら、片足だけ遺されていたら、首をワイヤーで締められていたら、ベッドで物言わぬ姿になっていたら、

俺は何を思うんだろうか。

彼女の気の抜けた、緩やかな笑みを思い出す。

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