27日目 ページ33
「俺らの告白がAの荷物になった？」
また、ふるふると首をふる。
「じゃあ…お前はどうすれば…」
"俺らに振り向いてくれるの？"
「振り向いてるよ」
「…」
「私…みんなのこと意識しすぎて自分が嫌…」
ポロリと涙が流れる。
彼は私を布団に寝かせると私の涙を指でひとつひとつ丁寧にすくっていく。
「みんなのこともう…」
「うん」
「みんなのこともう…友達で見れないよ…」
初めて言葉にできた自分の気持ち。
そうだ、私はもう彼らのことを友達として見ていなかったじゃないか。
1人の男の人として…彼らの事を見てしまっていた。
とうに彼らとの友情は消えてしまっていた。
「…それは…俺らにはチャンスがあるってこと？」
その言葉を紡いだ五郎くんの目にはあの告白の時と同じ、淡い炎が宿っていた。
「誰かひとりを選ぶなんて…私にはできない｣
「否定は、しないんだな。｣
否定できなかった。
否定しようなんて浮かびもしなかった。
「じゃあ俺らはもう一歩お前に近づく。」
「…っ」
「Aを困らせるなんて分かってる。」
「ごろ…くん」
「でも俺は、Aぐらいに困ってる。」
そう言うと彼は私の頬を撫でた。
彼の視線があまりにも熱い。
「お前が他のやつに惹かれたらどうしよう」
「嫌われたらどうしよう」
「Aが他の奴と付き合ったらどうしよう」
「…五郎くん…」
彼の言葉はあまりにも真っ直ぐだった。
「俺はAが思ってる以上にお前に惚れてる。」
焼ける視線が止まらない。
このまま熱が上がって溶けそうなくらい。
「Aが名前を呼ぶだけで胸が苦しい
もう、理性が飛びそう。｣
震える彼の息がかかる。
彼の唇が近づいてくる。
ああ、キスしようとしてる。
前みたいな耳とかじゃなくて、口。
「熱、移っちゃうよ」
ぼーっとする頭で考え抜いた精一杯の抵抗。
あと数センチという所で彼はピタリと止まる。
「いいよ？」
掠れた声でそう言えば、私の抵抗など虚しく彼は私の唇を奪った。
それはたった一瞬触れただけのキスだけど、私の思考が混乱するには十分。
「五郎くんの馬鹿。」
今更そんなこと言ったって過去のことは変えられない。
「あんま喋んな。」
そう言うとびたんっと新しい濡れタオルをおでこに乗せられる。
「病人にキスするぐらい俺、余裕ないみたい。」
そう言うと彼は立ち上がる。
「次は三郎くんが来るから。」
軽くため息を吐いて五郎くんは出ていった。
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作者名：はやま | 作成日時：2019年2月23日 15時
