25日目 ページ31
コチ…コチ…
目を開けたらそこは真っ暗だった。
頭がガンガンする。
時計の秒針の音さえも邪魔になるくらい。
「ん…」
必死にここはどこか場所を確認した。
モゾモゾと動き回る。
「…ん、あれ？Aちゃん…！」
寝返りを打ったら目の前には、月明かりに照らされてぼんやりとだけど次郎くんの顔。
「じろ…くん…」
「おはよう。体調…は、まだダメだよね」
「ん"ぅ…暑い…」
「暑い？じゃ、濡れタオル取り替えよっか。」
そう言うと、小さい間接照明を付けた。
赤い布団。赤い小物。その光で初めてここは次郎くんの部屋だと知る。
「別に、私の部屋でよかったのに…」
「だって、女の子の部屋勝手に入るのってなんかね…？」
「だから昨日も一郎くんの部屋だったのか…」
「そういう事。…自分の部屋、帰る？」
ちょっと…っていうかかなり辛いけど、人様のお部屋…しかも病人が長居は良くないと思って私は"帰る"と一言。
そう言うと彼は軽く微笑み私を軽々と抱き上げる。
これは…
「おひめさまだっこ…」
「気持ち悪くない？」
「ん…」
次郎くんって結構細いな〜ヘタレだなって思ってたのに…
なんだよ、案外しっかり男の子じゃないか。
「ちくしょー…」
「え？」
･
彼は私の部屋に律儀に"お邪魔しまーす"なんて言いながら入っていくと、ベッドへと私を下ろした。
「ごめん次郎くん。」
「ん、何が？」
「次郎くん寝れてないよね…？」
「ん？いやいいよ。Aちゃんの方がずっと大切。」
「…う"ん…」
変な声が出た。今ので一気に熱上がった気がする。
早く濡れタオルをくれ次郎くん。
「はい、濡れタオル。」
私の願いが届いたのか、私のおでこにはひんやりと濡れタオル。
「そろそろ、ごろと交代の時間だ。」
腕時計をちらりと見る次郎くん。
ああ、今って午前二時を回ったところなんだ。
彼はぽんぽんと私の布団を規則正しく叩いてくれる。
「ねえ、次郎くん。」
「…ん？」
「五郎くん怒ってた？」
気がかりだった、彼のこと。
「んー…怒ってたよ。」
やっぱり…。
「でも俺もちょっと怒ってるよ？」
「えっ…」
「だって熱無いって嘘ついたじゃん。」
「それは…」
「無理なんて1番良くないのに…」
「ごめん…なさい」
心配かけすぎた…かも。
「頑張りすぎちゃダメだからね？」
次郎くんは私のおでこをひとなでする。
ほんとうに優しい顔だった。
「じゃ、五郎のこと呼んでくるから。」
そう一言言うと彼は部屋をゆっくり出て行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はやま | 作成日時：2019年2月23日 15時
