舞賀家との暮らし方【ars】 (ページ1)

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私は今とーっても困ってる。
個人的には天変地異レベルの一大事。

昨日私はいつもと同じようにアパートに帰った。

私は今年の春、東京で美大生になってからひとり暮らし。
美大生ってやっぱりお金かかるってことで奨学金を借りての結構ギリギリの生活。
うちは特別貧乏ってわけじゃなかったけど、それでも4年間で一千万近くもかかる世界なんだから致し方がない。

だからお母さんにもお父さんにも言えなかった。

「え…アパート無くなるんですか？」

「本当に申し訳ないよ…」

アパートの部屋の鍵を開けた時、大家さんに呼び止められアパートの建て壊しについて説明された。
内容が衝撃すぎてちょっと笑えない。

「あと2週間後にはどうしてもここを出てもらわなきゃ行けないんだ…すまないね…」

申し訳なさそうに目を伏せる大家さん。
元々アパートに住んでる人は私を含め２,３人位。
それでいてアパートはとても古いということで速急に取り壊しになったらしい。

「いや、大丈夫ですよ！私あてありますから！」

あてなんてないんだけど、大家さんがあまりにもしょんぼりするから強がってしまった。

あ～も～こんなこと言ってもバレバレだよね…

「むしろこんな素敵なアパートに住まわせてもらって感謝してるくらいです！」

でもこれは本心。
絵の具を躊躇なく使う美大生を嫌うアパートがそこそこ多い中、大家さんは華の美大生なんだから存分に汚してもいいと言ってくれた。それでいて家賃も安かったし部屋も広かった。

本当、これ以上ない優良物件だった。

「今までお世話になりました！ありがとうございました！」

ぺこりと大家さんに一礼して残り少ない時間しか過ごせない自分の部屋に戻る。

「結局壁汚せなかったなぁ～…」

いくら自由にしていいよって言われてもやっぱり気が引けちゃって…こんなことになるなら思いっきり壁画くらい描いちゃえばよかった。

いきなり家なくなりました！なんて大学通わせてもらってる身でギリギリなのに親には泣きつく事は私の良心が許さなかった。