おやすみ、いい夢を。 ページ6
「…えぇ、まあそんなトコですかね…」
「えっ、それは大変ですね…人生損してますよ、それ」
「そんなに？」
クロの手から離れたレアリアは口に手を当て驚いた。
クロはため息を吐いた。
「所で、貴女どこから？」
「ドアからです！」
鼠花火を隠しながらクロは叫んだ。
首を傾げながらレアリアは話をもどす。彼女からはふんわりといい香りがした。
2人は数秒見つめ合い、姫が手をパチンと叩いて沈黙は終了した。
「今からいいものを持ってきてあげます！」
碧眼を三日月型に歪め、姫はニッコリ笑った。
「いや…本当いいんで、はい……いりません。さようなら」
やっぱりこの姫、無理。そう思った。
「遠慮なさらずに。はい、出来ましたわ！」
出来ました？その言葉に疑問を持ちながら視線を傾ける。姫の手にはマグカップが2人分。
中には甘い湯気を立てるホットミルク。
「本当は、夜中にこんな甘いもの駄目なんですけどね…いつも、寝付けない時は作っちゃうの」
差し出された金色のスプーンでくるくるかき混ぜると、スプーンに蜜色のとろりとしたものが付いた。
「これは…」
「蜂蜜です。あっ！もしかして、駄目でしたか…？」
心配する姫にそんな事ないと伝え、そろそろと口元へ運ぶ。
優しい甘さと暖かさが昼間の紅茶とスコーンを思い出させ、胃がきゅうとしまった。
ホットミルクが飲み干されるとクロは不思議と眠気に誘われた。
「リラックスすると、よく眠れるんです！あ、こっちです」
覚束ない足取りでクロは誘導されるがままに歩いていく。
空色のふかふかのシーツに埋もれると、クロは目を閉じた。
久しぶりだ、こんなに安心して眠るのは。
「おやすみ…なさいま……せ……」
かろうじてそれだけ言うと、クロは意識を飛ばした。
「私も、そろそろ眠いです…おやすみなさぁい……」
レアリアはクロと同じベッドに潜り込み、目を閉じる。
そして、無意識のうちにクロをぎゅっと抱きしめた。
「……あれ、私どうしてここに……えっ、姫のベッドの上ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ！？！？！？」
「ん…おはようございます…昨日のこと、覚えてないんですか……？」
クロの目覚めはレアリアに抱きつかれたまま姫のベッド上だった。
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作者名：蜂蜜流星群 | 作成日時：2020年8月1日 10時
