冷えた星にはジンジャークッキー ページ4
話し込んでいた時には、もう紅茶は冷め切っていた。
でも何故か2人で飲む紅茶は冷め切っていても美味しいまま。
幾度と無くクロは茶を飲んで来た。
しかし、あの姫と飲むお茶は格別に美味しかった。
ただそれだけ。
「それでは、失礼しました」
「じゃぁね〜」
無駄に豪奢で重い戸を閉めれば、口から出るのはため息をつく。
あぁ駄目だ。あの紅茶は余程…
私としたことがと芝居たらしくクロは膝をつく。
そしてすぐにやめた。
「…いいかもね」
クロは窓に寄る。
「平和ボケってのも。」
クロはそのまま飛び降りようとした。
すると、いきなり誰かに腕を掴まれた。
正確には「何か」に。
「何よ、死にたくなった？」
「降りようとしただけ」
硬い冷たい何か。それに、腕を掴まれた。
「あんた誰よ」
「ステラ。ステラ・グランシャリオ」
「なっが…」
クロはまた息をついた。
「それはグランシャリオ家を知っての言葉か？」
「いーえ、滅相も無いぃ！」
わざとらしく、煽るようにクロは語尾を伸ばす。舌打ちをして、ステラは黙る。
「…って事で、私に触るな」
クロエが隠しナイフでこの硬いなにかを突き刺す。
しかし、それに突き刺さる言は無く、粉砕したのはナイフの方だった。
「なんて野蛮な」
「うっさい。さっさと離しゃ良かった」
クロの腕からそれが離れた
「アイスシャイン…」
「あら、よく気づいたな。そうだ。これはグランシャリオ家のみに許された聖なる力だ。凍った星は私の手足となる。私は星を操ることが出来る。」
ステラは手の上で氷の結晶と星屑をくるくるさせた。
その度に光に照らされ、美しく輝いた。
「ま、いいよ。仲良くしようや」
クロ拍子抜けたように手を振る。
「………」
「黙ってないで、ほら、こうすんの」
クロはステラの冷えた手を握った。
ステラはひどく驚いたようだ。
「…私…ステラの方だぞ？姉様達とは違うんだぞ？」
慌てて払わんとするステラの手を、クロは握る
「ステラ。仲良くしよ？」
ニタリと笑うとクロは瞬時に消えた。
かさりと音を立て何かが落ちる。ステラが覗き込むと、そこには3枚のジンジャークッキー。
逃げたのだ、すばしこい奴めとクロは呟いた。
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作者名：蜂蜜流星群 | 作成日時：2020年8月1日 10時
