金色の人生を【降谷零】 (ページ8)

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『今日はありがとうございました、降谷さん。』

運転席に乗り、助っ席に座った上司に礼を言う。

今日は彼がなかなか恐ろしい人物だということに気付いてしまったり

実は29歳だという衝撃の事実を知ったりと、なかなか濃い食事だった。

知った時は、もうすぐ三十路じゃん！！見えないわ！！と静かにツッコんだ。

まぁそんな中食べたお寿司は、皮肉なことに過去一と言っていいほど美味しかったのだけれど…。

「君は寿司が好きなんだな。」

『あ、分かっちゃいました？』

「初めての上司との食事にも関わらず、夢中になって頬張っているのを見たらね。」

『あはは…なんかすみません。』

一応緊張はしてたんだけどな…と思いつつ苦笑いを浮かべて発進する。

「いいや。公安ではあまり見ないタイプだから面白かったよ。」

『はい、、？』

面白いってどういうことよ。

腑に落ちず悶々としていると、そういえば、と降谷さんが呟いた。

「警察学校では全科目オールAだったそうだな。」

『えぇ、まぁ…。確か降谷さんも、、』

「あぁ、僕も同じだ。」

『教場はどこだったんですか？』

「鬼塚教場だったな。」

『え？！』

まさか教場まで被ってるとは思わず、車内で一人驚く。

『私も鬼塚教場でしたよ！』

「それは奇遇だな。どうだった鬼塚教場は。」

『まさしく鬼教官て感じでしたね。
噂では7年前に卒業した人達がヤンチャすぎて、さらに厳しさが増したとか…。』

「ﾌｯ、確かに結構派手にやらかしていたからな…僕達。」

降谷さんは軽く笑って言った。

……ん？今僕達って…そうか降谷さんの代だったのか！！

『…じゃあ厳しくなったの絶対降谷さんたちのせいじゃないですか！』

「ははっ、そうかもな。」

『後輩たちが迷惑蒙ってます！』

隣の降谷さんを睨むと

「厳しさは鬼塚教官なりの愛情だろ。」

とか言って笑う。

『まぁ…確かに教官って意外と愛情深い所はあるからな…。
教官よく〝お前らは死ぬなよ〟って口癖のように言ってましたし。』

交差点の信号待ち

そう呟くと、やけにウインカーの音だけが響いた。

ちらりと降谷さんの方を見ると、どういうわけか私の瞳に映った悲しげな横顔。

下唇を噛んでずっと遠くを見つめるような目だった。

…どうして？

なぜこんな表情を浮かべているのか分からない。

気が付けば信号は青に変わって、結局その理由を聞くことはなかった。

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