夜の使者【鬼滅の刃】

陸 ページ9

腕立て伏せを続行しながら聞いていたAは驚き喜んだ。


やっと次の段階に行ける程の状態になれたと、慢心は一切していない。詠の鍛錬はスパスタであるが詠自体はスパスタではないのだ。


Aを叱ったことはないし、きっと途中で投げ出しても何も言わないであろう。Aも弱音を吐いたことは一度たりともない。自分から言い出したことを止めるほど覚悟は甘くはないしこれが普通だと思っている。


詠も柱の時継子をつくろうと隊員達に同じ鍛錬をやらせたが半月ともたなかった。当時これが不思議で仕方がなかったらしい。





｢A、動きが単純です。


工夫しているのでしょうが殺気が微妙に漏れていてバレてしまいますよ。それに目線も誤魔化せていません。


いいですか、相手は鬼です。僕達人間より何倍も身体能力が高く、相手の上を常にいかねばなりません。｣





先程から半刻、ずっと詠に撃ち込んでいるが一撃も入らない。相手は避けながらアドバイスをする程まだまだ余裕がある。





｢A、常に意識しなさい。


鬼は貴方の全てを見ています。手足の筋肉の動き、殺気、視線、息遣い、全てが貴方を殺す為の情報なのです。


思考を放棄してはいけません、足をとめてもいけません。




“常に考え続けなさい”。｣





常に考え続ける、鍛錬時の詠の口癖だ。弱いことは恥じることではない、強いことは驕ることではない。慢心した者から居なくなってゆく。弱いと思うのならしっかりと地に足をつけ前を見ろと、常に言い聞かせている。





｢ｯ、はい！！｣



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《大正コソコソ噂話》

詠は怒ったところを見たことない程温厚ですが、笑ったまま獅子の子落としをする恐ろしい人です。本人に自覚はありません。

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