夜の使者【鬼滅の刃】

肆拾壱 ページ45

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｢でも私には帰るべき所があるから、共に歩む友が居るから｣



｢そんなもの、くだらない！｣






Aの返答に天魔はイラつきを覚えた。



帰るべき場所？そんなもの自分にはなかった。この神社も結局は廃れていき、親もいない自分には帰るべき温かい場所などどこにも存在していなかった。



ただ紫昏の存在だけが自分の生きていた理由。






｢くだらなくなどない！



人には生きる理由が必要なんです、でなければこの酷く苦しい世の中で生きていくのにもがき続けなければならない｣






Aは叫んだ、肺を膨らませ出した声は毒により激痛が伴うがそんなのどうでもいい。



自分はかつて詠に生きる理由を貰った、だからAという人物が存在出来ているのだ。



この鬼は間違っている、哀しすぎる。本当はもっと幸せになってもいいのに彼自身がそれを許していない。






｢今私がここで諦めたら義勇と錆兎も死んでしまう、そんなの私が許すはずがない。理由はそれだけで充分です。



貴方にもそういうものがあるでしょう、天魔｣






天魔は攻撃する手を止めた。



その隙をみてAは攻撃、などせずに天魔の瞳を見つめる。今斬った所で紫昏がいる限りなんの意味もないし体力を削り毒の進行を進めるだけだからだ。



ただしこの言葉は天魔の気を引くためではなく本心から出た言葉である。






｢お前に....何がわかる....!!｣



｢分かりません。他人である私が分かるはずがないでしょう｣




+・+・+・+



《大正コソコソ噂話》

Aにとって詠は第二の父親のような存在ですがもっと比喩的に言うと寝床です。自分の身を安心して預けられ寒い朝には布団から出たくなくなる、そんな心の拠り所。



きっと詠がいなかったら彼女は目的もなく荒れた荒野の中裸同然で彷徨いボロボロになっていたことでしょう。

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