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「そう思っての。ルームサービスを頼んでおいた。今日はもう部屋で過ごしてくれて構わん」
「えっ、ルームサービス!?」
瞬時に桃華の瞳がキラキラと輝く。
「大量に頼んだのでちと時間がかかるそうでの。先に風呂にでも入って普段の格好に戻ってくつろいでくれ」
「わーいっ！僕先にお風呂使っていいー!?」
喜んでバスルームに飛んでいく桃華。
よかった。私としても優斗でいてくれる方がいいもの。
「華月嬢」
「はい？」
「旅行は楽しめているかの？」
じ、と。彼女の瞳を見据える。
どうやら茶化した質問ではなく、真剣に聞いているらしい。
「楽しく、はありません」
「ほう？」
「せっかく、みんなが近くにいるのに。話せないのも、時間を共有できないのも楽しくないです」
本当は、話したいこともいっぱいあった。
一緒に楽しめたらいいのにって、何度も思った。
「天宮嬢はどうかの？」
『･･･貴女のお世話を楽しめるのは榊さんだけです』
「ふむ？」
『でも、与えられた仕事はきちんとするのでご安心ください』
「･･･ま、そんなことより」
え、そんなこと!?改善策ナシですか!?
あと輝のことも労わってあげて!?
「これを渡そうと思っての」
がさっと音を立てて手渡されたのはピンクのショップ袋。
「コレは？」
「華月嬢は明日それを着るように」
「はぁ･･･」
「天宮嬢はそのままじゃ」
『わかりました』
「では、わしは自分の部屋に戻るでの」
すくっと立ち上がって、音もなくその場を立ち去る彼女。
そして躊躇いもなく、部屋を出てその扉を閉ざす。
「･･･なんだったの」
『本当に』
零れた2人の声は、広い部屋に虚しいくらいに響いた。
このときの私達はまだ知らない。
明日、どれだけ大変なことが待ち受けているか。
今の私達は普段の姿に戻ったこともあって。とても開放的な気分になっていた。
『明日は朝６時に理事長の御付きの人が準備しに来てくれることになってるから』
ルームサービスを食べ終わってのんびりしていると聖夜から伝えられる。
「えー!?明日もそんな早く起きなきゃいけないのー!?」
優斗は悲壮な顔をしているけれど仕方ない。
だって私は外国人にならなきゃいけないし。
2人は性別を変えなきゃいけないし。
準備には時間がかかる。
「･･･よし、じゃあ私寝るわ」
『おやすみ』
「おやすみー」
旅行1日目の感想：
可もなく不可もなく。でもどちらかといえば楽しくなかった。
以上
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作者名：聖夜 | 作成日時：2022年8月27日 0時
