ワケあり王女ー7ー (ページ3)

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303《修学旅行、１日目後半》ページ3

《瞳side》

賑やかになるホテルのロビー。

お土産を売っているお店の中は、美鷹の生徒で埋め尽くされていた。

夕食までに与えられた2時間の自由行動。

「桃華、外行く？ここにいたら変に目立つし」

「うん、そうしようか」

ボソボソと小声で会話。

輝は理事長に呼ばれてどこかに行ってしまった。

外に出れば、昼と夕方と夜が入り混じったような、曖昧な色の空。

「ねぇ、」

「お。センセーじゃねぇの〜」

ゆらり、漂うような声が耳に入る。

咄嗟に開こうとしていた口を無理やり閉じた。

あ、ぶなかった！！

普通に日本語で話すところだった！･･･てゆうか。

「っ！」

なんで生徒会のメンバーがここに集結してるのよ!?

ちらっと桃華の表情を窺えば、わかりやすくその笑顔は引きつっている。

「つか、本気で日本語わかんねぇの？」

ひょこっと首を傾げるその姿は女の子に受けそうだけど！

今奏に求めてるのはそういうことじゃないの！

みんなを連れてホテルの中に戻ってほしいの！

［あ、貴方達はお土産買わないの？］

英語で問いかけてみれば、答えを導くように綾に視線を送るみんな。

そしてそこ綾の答えといえば。

［センセー達に絡んだ方が、面白そーだろ？］

にっと口角を上げて、さらっとそう言ってのける。

誰かこの男の口を塞いでくれ。

そんな私の考えなんて知る由もないメンバーは、さくさくと砂を踏みながら近づいてくる。

いや、いいから！近づいてこなくていいから！

「教育実習生、なんですよね？」

柔らかな声で桃華に問いかける陽平。

心の中で応援しながら桃華を見れば

コクコクとぎこちない動きで頷いていた。

「大学生なんですか」

うーわー。なんか探ってる。

目に見えて探ってる。

［･･････］

なんか、不便だ。

迂闊に口を開けないし。

［ほら、そろそろホテルに入らなきゃ。夕食の時間になるわ］

そういえば今、私には"教育実習生"という権限がある。

気まずい状況なんて自分で指示を出して切り抜ければちいんだわ。

「おー、マジだ。もう入ろうぜ昴。腹減ったし」

綾が自分の欲求に素直な人間でよかったと、心底思う。

綾の言葉に従うようにして、みんなぞろぞろと連れ立って歩く。

･･･なぜか私と桃華も一緒に。

隣を歩いてる桃華から、痛いほど視線が投げられてくる。

みんながどこかに行ってくれないとどうしようもないというのに、ホテルのバイキングコーナーに行ってみれば。