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「ヤラシイことなんてするワケないでしょ?」
「おいおい〜。俺を誘うんだからそれくらいのオプションあってもいいでしょうよ〜」
「どんなオプションよ」
きっと睨みつければ、彼は飄々とした顔で自分の定位置に座る。とても美しく足を組むその姿に、更に色気が増したんじゃないだろうかと思う。
「で?なんで俺と出かけてぇの?」
「あの、教えてほしくて。女の人が、喜ぶモノ・・・」
気恥ずかしくて、少し俯く。
脳裏を過るのは、柔らかな薄桃色。
「ん〜?喜ぶモノねぇ・・・。何があんの?」
「誕生日、なの。桜さんの」
私の、大切な人。
何か少しでも恩返しがしたくて。でも、"他人"を貫いてきた私にはわからないのだ。
彼女が喜んでくれそうなモノなんて。
「桜さんってコレが好きなんだよね〜、とかねぇの?」
奏のもっともな質問に、うっと言葉に詰まる。
桜さんが、好きなモノ。
「・・・可愛いモノ?」
「えらく抽象的だねぇ〜」
「だから奏に何か教えてもらおうと思って・・・」
女の人が喜ぶモノ、たくさん知っていそうだし。
「あ」
あぁ、そうだ。一つ、知ってた。
彼女の好きなモノ。
「何か思い出したのか?」
私が声を上げたのを聞いて、昴が先を促す。
「うん、あのね。桜さん、前にマカロンが好きって言ってて」
食べ物になってしまうけれど。でも考えたらその方がいいのかもしれない。
ずっと形に残るモノよりも、食べたらなくなってしまうようなモノの方が。
「どこか美味しいお店、知らない?」
自分は滅多に食べないモノだから、情報に乏しい。
「ネットで調べてみようか?」
陽平がパソコンを指差して聞いてくれる。
その言葉に甘えようと思ったとき。
「ま〜ま〜待ってちょうだいよ〜」
ゆらゆら片手を振りながら奏が止める。
そしてふむ、と少し考える素振りを見せたあと。
「作ればいいじゃねぇの」
さもない、というふうに軽く言い放った。
一瞬思考が止まって、そのあと頭の中で彼の言葉を噛み砕く。
そしておずおずと口を開いた。
「あの、作るって、マカロンを?」
「おいおい〜〜。今はマカロンの話しかしてないでしょうよ〜」
「作れる、の?」
あれって自分で作れるものなのかと首を傾げる。
そんな私を見て、奏は秀麗に口角を上げた。
そして色気を孕んだ声で一言。
「俺を見くびっちゃいけねぇよ?」
不敵な表情で、そう言い放った。
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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時