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〈瞳side〉


「どしたのー?瞳ちゃん」


昴の足音が遠ざかってから、お茶を飲む私に声をかけてきた優斗。


「どうしたって、何が?」

「んー、なんていうかー」


どうやらうまい言葉が見つからないようで。

そんな彼に代わって口を開いたのは綾だった。


「何ガキみてぇに拗ねた顔してんだよ、貧乳ブス」

「え?」


拗ねた顔、なんてしてるつもりないのに。


「別に拗ねてないわよ。そもそも何に拗ねるのよ」

「俺様が知るかよ、そんなこと」

「・・・・・・」


・・・なんて理不尽な。

ちらり、ガラス戸越しに中庭を見つめる。手入れが行き届いたそれは、眩暈がしそうなほど美しかった。

はらはらと音もなく雪が白を重ねる。

純白に世界が染まる。

好きじゃないのに、見つめてしまう。

あぁ、そうか。


「・・・苦手、なんだと思うわ」

「何がー?」

「畳の匂いと、木の匂いが」


苦手。よくわからないけれど。


『暁の家だから、じゃなくて?』


聖夜の言葉を頭の中で噛み砕く。

それは"極道の家だから"ってことなんだろうか。

ちろりと彼女に視線を向ければ、彼女はこちらではなく中庭を見つめていた。

なんの感情も持っていないような瞳で。


「昴の家は、好きよ。多分ここが洋館なら苦手なものはないわ」

「うーん。僕は畳の匂い、好きだけどなー」


言いながらぱたんと寝転ぶ優斗。

いくら家の人がいないからって寝転ぶのはどうなんだろう・・・。まぁでも、優斗だし。


「ま、苦手なモンの一つや二つ誰でもあるんだからいいんじゃねぇの?」


奏が少し目を細めながら言う。

その月光色をした瞳に雪の白が反射して、背筋が震えるほど妖艶だった。

なんだか部屋が微妙な空気に包まれてみんな押し黙ってしまう。誰も口を開かなければ聞こえる音は何もなくて。


「あ、そうだ」


静寂を破ったのは陽平で。

彼のその一言で部屋が呼吸を取り戻す。

普段から静かな空間が苦手だと豪語している優斗なんて、冬だというのに額に変な汗が滲んでいた。


「急になんだよ〜」

「一発芸でも見せてくれんのか?」

「わー見たーい!ヨウ君頑張ってー」


ぱちぱちなんて気のない拍手を送る3人。

いや、どう考えても陽平は一発芸なんてしないでしょ。

そんな空気でもなかったでしょ。

どうして基本のベースが悪ノリなんだこの人達は。


「奏、綾、優斗」


はぁ、と溜め息をつきながら3人の名前を呼ぶ陽平。

そのあとにっこり笑って一言。


「黙れ」

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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時

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