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楽しそうに場を掻き回した理事長は退室し、広い和室の中は、いつものメンバーだけになった。
「そーいや、昴ん家来たの初めてだな」
今更か、と思うようなタイミングでそんなことを呟く藤城。
「ねー。料亭みたいに綺麗だねー」
うんうんと頷きながら、食後のお茶を啜る吉良。
「料理もうまかったしねぇ。ま、食後の一服ができねぇのは痛いけどな〜。椿さんもいるから仕方ねぇけど」
「俺的には静かにご飯も食べれたし、理事長の標的にもならなかったから満足だけどね」
・・・静かにご飯を食べれたのは貴方だけだけど。
そんな彼に、瞳が素朴な質問をする。
「陽平って、理事長のこと苦手なの?」
ピタリ、彼の動きが止まる。それと呼応するように、室内には笑い声が溢れた。
「ギャハハハハ!苦手にもなるわなー陽平!」
「悲惨だもんねー毎回!あははっ!」
「おいおい〜笑ってやるんじゃねぇよ〜。かわいそ、ふはっ、可哀想じゃねぇの」
「カナちゃんだって噴き出してるじゃんー!」
けたけたと笑い転げる3人。それを訝しげな目で見つめる瞳。
暁は私の隣で申し訳なさそうに片眉を下げながらお茶を飲んでいた。
「・・・で、何があって苦手なの?」
ひとしきり笑って落ち着いた3人に瞳が問いかける。
「いやぁ〜昔はよく椿さん、校内をウロウロしててよ〜。ま、榊さんの目ぇ盗んでは仕事ほっぽり出して徘徊してただけなんだけどよ〜」
・・・秋山、彼女は今も徘徊してるわよ。
「で、陽平ってこの通り美鷹の中じゃ真面目な方だろ〜?面白がった椿さんが弄る弄る。さっきの榊さんみてぇな状況だったワケよ〜」
・・・あぁ、目に浮かぶ。
弄られてる岬と楽しそうな理事長の姿が。
「・・・トラウマだよ、本当」
ぼそりと呟く岬の周りを哀愁が揺らめく。
それを聞いた例の3人が、またしてもバカ笑いを始めた。
どうやら理事長は真面目な感じの人間を弄るのが好きらしい。そういえばタイプ的に榊さんと岬は感じが似てる。
できれば標的が自分にならないことを願っておこう。
テンションが落ちてしまった岬を慰めることもせず、各々が自由にくつろいでいるとき。
隣に座っていた暁がすっと席を立った。
「どこか行くの?昴」
瞳の問いに彼は考えるように数秒黙って。
「野暮用」
考えたわりには微妙な返事を返した。
瞳も微妙な間で「ふぅん」と返事をすれば、彼は小さく息を吐いてから、ちらっと私を見て、部屋を出ていった。
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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時