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「榊、昼食を8人分。客間に用意してくれ」

「かしこまりました」


ぺこり、一度頭を下げて、彼は奥へと消えていく。

理事長に案内されるまま、彼女のあとについて歩く。


「ここじゃ」


最奥に突如現れた、普通のドア。

ここまで、襖の部屋しかなかったのに。

"和"の中に一つ溶け込んだ"洋"に、違和感を覚える。

理事長の手には、金色の鍵が握られていて。

それで解錠して、カチャリとそのドアを開く。

中はレトロ調の家具で揃えられた、モダンな部屋だった、


『失礼します』


一つ礼を落として、促されるまま部屋に入る。

すると彼女は少し呆れたように笑った。


「そうかしこまるな。ぬしぐらいの年齢なら、図々しいくらいでちょうどいい」


"ここに"と彼女が指差したのは長ソファー。

小花柄で猫足のそれは、とても可愛らしかった。


『理事長の、お部屋なんですか?』

「うむ、なぜか皆怖がって近づいてこん。昼食ができるまで、お茶でもしようと思っての」


私をソファーに座らせたまま、彼女は部屋の奥からティーセットとお菓子を持ってきてテーブルに並べる。


「ダージリンでよいかの?」

『はい』


差し出されたのは紅茶。

和服の人に紅茶を出されるなんて、少し変な気分だ。


「さて」


向かいのソファーに座った彼女は、一口紅茶を飲んでから口を開いた。


「なにか聞きたそうな顔をしておるの」


ごくり、私も一口紅茶を飲んでからカップをソーサーに置いた。


『理事長は、どうして私をここに・・・?』


暁でも、瞳でもなく、私を。

正直、会話をするのだって今日で二度目だ。

個人的に呼ばれるような仲でもない。なのに。


「わしはの、天宮嬢」


滑らかに落とされた声は、穏やかに鼓膜を震わせる。


「ぬしを気に入っておる」

『は、ぁ・・・。ありがとうございます』

「"美鷹"で起こったこと、理事長のわしが知らぬワケもあるまい」


そうしてまた、紅茶を口に含む。

彼女はとても落ち着いた様子でいるけれど、彼女の言わんとしていることがわかってしまった。


『莉鏡ヒナのこと、ですか』

「つい先日、美鷹をやめての。綿貫仙太郎と一緒に」

『・・・そう、ですか』


そうなるだろう、とは思っていた。

家が潰れて、彼女達を縛るものがなくなった今、あの2人は一緒にいられるはずで。

そうなれば、もう美鷹にいる理由はない。

まぁ、私はあれから教室に行っていないから本当に退学したかどうかは知らなかったのだけれど。

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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時

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