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「嬢も綾もウルセぇよーほらもう食えるぞ」


ぐつぐつと、美味しそうな匂いと音を放っている秋山お手製のすき焼き。

それを視界に収めた藤城は、瞳を一瞥したあと。


「俺は今からすき焼き食うから大人しくしてろよ、貧乳」

「ちょ、はぁ!?どう考えても騒いでたのは綾でしょ!?」

「どっちでもいいよ〜。ホラ姐さん、肉食え肉」


ひょいっと、私の器にお肉を入れてくれる秋山。

しかもいつの間にか誰かが溶き卵まで用意してくれていた。


『ありがと』


初めての関東のすき焼きだ、なんて地味に感動していれば。


「聖夜ちゃんコレも食べられるよー」

「はい、聖夜ちゃん」

「しゃあねぇなー。ホラよ」

「聖夜、私のも」

「ん」


なぜかみんなからお肉を差し出される。


「るぅちゃんはいー」

「聖夜さんコレも」

『七音と花音まで・・・』


ほんとになんだこの状況は。


『どうしたの、突然』


藤城だっていつもなら我先にとお肉を奪っていくくせに。

そんなふうに思っていれば。


「お前、痩せすぎ」


労るような声音で暁に言われて、くっと喉が詰まる。


「みんな心配してたんだよー、聖夜ちゃんー」

「どうせロクに食ってなかったろ〜?」


あぁ、そうか。


「これからもっと寒くなるし、たくさん食べてもらわないと」

「私だって奏に食べさせられてるんだから」

「つかさっさと食わねーと冷めるぞ」


もしかしたら、私が想像してるよりもずっと。

みんなは私のこと、見ててくれたのかもしれない。


『・・・う、ん』


声が震えないように、必死に平静を装って。


『いただきます』


私が入れてもらったお肉を口に入れたのを見て、ようやくみんなもすき焼きを食べ始める。

当然、しっとりした雰囲気になるワケもなくて。



「優斗、コレ食えよ」

「ちょ、リョー君自分が嫌いだからって僕にねぎ押し付けてくるのやめてよねー!」

「はー?俺の優しさだろーが」


とても賑やかに、夕食は進む。


「はいはい綾ちゃんよ〜。肉ばっか食えると思うなよ〜」

「あっ!カナ!俺の器に野菜入れんな!」

「ちょっと、綾!私のとこからお肉取らないでよ!」

「油断してるからわりーんだよ!」

「お酒も買ってくればよかったね、昴」

「・・・お前飲むの好きだよな」


がやがやと騒いで、落ち着きなんて欠片もない。

ころころと表情を変えるみんなを見ていると、無意識に口角が上がる。


『ふふっ』


思わず漏れた笑い声に、みんな敏感に反応して。

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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時

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