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「お前が、」


誓うような、凛とした声だった。


「お前の記憶がもし戻って、俺らのこと忘れたとしても」

「・・・うん」

「もう1回出会って、もう1回【離れたくない】って言わせてやるから」

「・・・うん」

「だから二度と、離れるなよ」

「貴方、は・・・?」


でもね、綾。

不安なのは、私の方なんだよ。

記憶の中に巣食う、不安の種。

いつかのセナと、あなたとの会話。


「貴方はずっと、一緒にいてくれるの?私と・・・、私達と」


【美鷹のお前を捨てる気かよ】

あの日セナは、確かにあなたにそう聞いた。

確かな答えを、私はいまだに聞けていない。


「私も離れないから。だから、」


美鷹から貴方の姿が消えることを、想像できない。


「だから、綾も離れないで・・・」


ふっと目を閉じる。

祈りにも似た、私の言葉。

それを聞いた綾は、私の身体を縛っていた腕を放した。

解放された瞬間、不安が足元を舐める。

思わず振り返って彼を見つめれば。


「バーカ」


いつも通りの、意地悪な表情。


「離れねぇよ。離れるワケねぇだろ」

「・・・ほんと?」

「何疑ってんだよ」

「じゃあ、」


すっと、右手を出す。

小指を立てながら。

それを見た綾が、訝しげに眉根を寄せた。


「・・・なんだよ?」

「指きり」

「はぁ?」


"ガキくせ"と呟きながら、それでも彼は私と小指を絡めた。


「約束ね。離れないって」

「お前もな」


とても子供っぽい方法で、誓いを立てた。

その子供じみた、脆い誓いを破るのは・・・・・・。






ピンポーン、と。

綾と2人きりの曖昧な空気を壊すように、部屋の中にチャイムの音が響く。

数秒、目の前にいる彼とぱちくりと視線を交えたあと。

首を傾げながら一緒に玄関へと向かった。

そしてカチャリと扉を開ければ。


「おっじゃましまーす」


がさりと白いナイロン袋を手に掲げながら部屋に入って来た優斗と、無理やり連れてこられた感満載の聖夜と、その他生徒会のメンバー。

それに加えて、花音ちゃんと七音もいる。


「つーかお前ら何しに来たんだよ!?」


わぁわぁとみんなが玄関で靴を脱ぐのを見つめながら、綾が少し焦ったような声で問えば。


「【何しに】って、みんなですき焼きパーティーしに来たんだけど〜?」


ゆるりといつも通りの掴みどころのない声で奏が答えてくれた。

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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時

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