検索窓
今日:36 hit、昨日:1 hit、合計:29,501 hit

169《傍にいる理由》 ページ19

「・・・今、話した通りです」

冷えきった部屋で、声が凍りそうになる。


「確かに、私はあの子が言った通り、自分が誰かもわからないし、過去に何をしてきたかもわからない。姫になる資格だってないし、それどころか」


涙が流れそうになるのを必死で堪えながら言葉を紡ぐ。

それでも、声が揺れて一度息を整える。


「それどころか・・・人と、関わる資格だってないと思ってた」

「【思ってた】ってことは、今は違うの?」


下へ落としていた視線を陽平の方に向ける。

・・・今、は・・・。


「正直、その考えが消えたとは言えないけど・・・でも」


もし、"私"の我儘が許されるのならば。


「みんなと一緒に・・・っ。ずっと、一緒にいたい・・・ッッ、っひゃぁっ!?」


そう言った瞬間、ずっと隣にいた金色の彼にグッと肩を抱え込まれ、グシャグシャと頭を撫でられる。


「ちょっと、綾、やめっ、」

「忘れる暇もないくらい、毎日一緒にいてやるよ」


自信満々に笑うその表情が眩しくて。

本当に、太陽みたいな人だと思った。

境界線が、消える。


「つーかよ、お前、【離れられねぇ】って前にも言ってただろーが。そのときに俺らは【放さねぇ】っつったろ」


"忘れんじゃねぇよ"と、さっきとは打って変わってとても意地悪そうに口角を上げる。彼の目は、少し優しさを孕んでいるように見えた。





「よし、じゃあ次は姐さんの番だな〜」


奏の声でみんなの視線は聖夜へと移る。


『・・・・・・』


聖夜は頑なに口を閉ざしたまま。

でも、私は聖夜のことも気になるけど、一つだけこれだけは聞いておきたいことがあった。


「・・・ねぇ、聖夜は本当に私と双子なの?」

『・・・さぁ、プロがDNA鑑定してそうならそうなんじゃない?・・・まぁ、だから何?って感じだけど』

「っ・・・」

縋るように聞いた答えは、求めていたものとは違う冷たいものだった。


「・・・聖夜ちゃん、その言い方は『事実を言っただけよ』・・・」


思わずたしなめようとした陽平の言葉をばっさりと遮った聖夜は、思わず力が緩んだらしい昴の手を振り払って、近くにあった机に寄りかかった。


『本当に血が繋がっていたとしても、戸籍上瞳が一人っ子よ。だって・・・』



『私の戸籍が存在していないから』


続いた言葉は想像を遥かに超えたものだった。


「どうして・・・」


狼狽する私達を横目に彼女はいつも以上に無表情だった。

170→←168



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
64人がお気に入り
設定タグ:ワケあり生徒会
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。