169《傍にいる理由》 ページ19
「・・・今、話した通りです」
冷えきった部屋で、声が凍りそうになる。
「確かに、私はあの子が言った通り、自分が誰かもわからないし、過去に何をしてきたかもわからない。姫になる資格だってないし、それどころか」
涙が流れそうになるのを必死で堪えながら言葉を紡ぐ。
それでも、声が揺れて一度息を整える。
「それどころか・・・人と、関わる資格だってないと思ってた」
「【思ってた】ってことは、今は違うの?」
下へ落としていた視線を陽平の方に向ける。
・・・今、は・・・。
「正直、その考えが消えたとは言えないけど・・・でも」
もし、"私"の我儘が許されるのならば。
「みんなと一緒に・・・っ。ずっと、一緒にいたい・・・ッッ、っひゃぁっ!?」
そう言った瞬間、ずっと隣にいた金色の彼にグッと肩を抱え込まれ、グシャグシャと頭を撫でられる。
「ちょっと、綾、やめっ、」
「忘れる暇もないくらい、毎日一緒にいてやるよ」
自信満々に笑うその表情が眩しくて。
本当に、太陽みたいな人だと思った。
境界線が、消える。
「つーかよ、お前、【離れられねぇ】って前にも言ってただろーが。そのときに俺らは【放さねぇ】っつったろ」
"忘れんじゃねぇよ"と、さっきとは打って変わってとても意地悪そうに口角を上げる。彼の目は、少し優しさを孕んでいるように見えた。
「よし、じゃあ次は姐さんの番だな〜」
奏の声でみんなの視線は聖夜へと移る。
『・・・・・・』
聖夜は頑なに口を閉ざしたまま。
でも、私は聖夜のことも気になるけど、一つだけこれだけは聞いておきたいことがあった。
「・・・ねぇ、聖夜は本当に私と双子なの?」
『・・・さぁ、プロがDNA鑑定してそうならそうなんじゃない?・・・まぁ、だから何?って感じだけど』
「っ・・・」
縋るように聞いた答えは、求めていたものとは違う冷たいものだった。
「・・・聖夜ちゃん、その言い方は『事実を言っただけよ』・・・」
思わずたしなめようとした陽平の言葉をばっさりと遮った聖夜は、思わず力が緩んだらしい昴の手を振り払って、近くにあった机に寄りかかった。
『本当に血が繋がっていたとしても、戸籍上瞳が一人っ子よ。だって・・・』
『私の戸籍が存在していないから』
続いた言葉は想像を遥かに超えたものだった。
「どうして・・・」
狼狽する私達を横目に彼女はいつも以上に無表情だった。
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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時