検索窓
今日:28 hit、昨日:1 hit、合計:29,493 hit

165 ページ15

からからと再び部屋のドアが開いたのは、少し長く時間が経ってからで。ただ私の感覚だけで、本当にそれほど時間が経っていたのかはわからないけれど。

室内に入って来たのは先ほどの医師と男性。

そして泣き腫らしたように、目元を赤くした女性だった。

それを見た瞬間、酷く胸が痛んで罪悪感だけが募る。


「・・・瞳ちゃん。私、」


震える声をぎゅっと抑え込んで、笑顔を向けてくれるその人。


「私の名前、古雅桜っていうの」


まるで、初めて会った人に自己紹介をするように。


「彼は私の主人の、古雅壮也。私、達は」


とても丁寧に説明してくれた。

泣きそうな声で、言葉に詰まりながら。

ぎこちない笑顔で、私達の関係を。


「私達はね、あなたの両親なの・・・」


彼女の言葉に目を見開く。

ただただ信じられなくて古雅桜さんと古雅壮也さんを見つめる。

どこからどう見ても2人は若くて。

苗字さえ違う彼らとの血の繋がりは感じられなかった。

聞かされる、色々なこと。

2人に養子にもらわれて、私達の間には血の繋がりがない。

今の年齢は15歳。私は幼稚園から"桜場女子大"の付属校に通っていた。

今年から高校1年生。

身体を動かすのが好きで、合気道が得意。

茶華道は一通りできる。

教えてくれることに、何一つ心当たりがなくて。

中途半端な私は、泣くことも受け入れることもできずに。


「そう、なんですか・・・」


一言、そう返しただけだった。

聞かされる"華月瞳"が、誰なのかわからなかった。


その夜。

独りになった病室で、やっと遅い産声を上げた。

自分がわからないことが、こんなにも怖いなんて知らなかった。


「・・・っっ、」


誰か。


「・・・助けて」


話してくれる内容の一つでもいいから、違和感なく受け入れられる何かがあったのだとしたら。きっとおぼろげでも、"本当"だと思えた。

なのに。


「どうして、何も思い出せないの・・・っ」


ぐるぐると、同じことばかり考える。


「・・・ック、・・・私は、誰なの・・・ッ」


答えてくれる人なんて、独りの部屋の中にいるはずもなかった。

どうせなら、私の身体も消えてしまえばよかったのにと、本気で思った。

166→←164《誕生日》



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
64人がお気に入り
設定タグ:ワケあり生徒会
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。