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からからと再び部屋のドアが開いたのは、少し長く時間が経ってからで。ただ私の感覚だけで、本当にそれほど時間が経っていたのかはわからないけれど。
室内に入って来たのは先ほどの医師と男性。
そして泣き腫らしたように、目元を赤くした女性だった。
それを見た瞬間、酷く胸が痛んで罪悪感だけが募る。
「・・・瞳ちゃん。私、」
震える声をぎゅっと抑え込んで、笑顔を向けてくれるその人。
「私の名前、古雅桜っていうの」
まるで、初めて会った人に自己紹介をするように。
「彼は私の主人の、古雅壮也。私、達は」
とても丁寧に説明してくれた。
泣きそうな声で、言葉に詰まりながら。
ぎこちない笑顔で、私達の関係を。
「私達はね、あなたの両親なの・・・」
彼女の言葉に目を見開く。
ただただ信じられなくて古雅桜さんと古雅壮也さんを見つめる。
どこからどう見ても2人は若くて。
苗字さえ違う彼らとの血の繋がりは感じられなかった。
聞かされる、色々なこと。
2人に養子にもらわれて、私達の間には血の繋がりがない。
今の年齢は15歳。私は幼稚園から"桜場女子大"の付属校に通っていた。
今年から高校1年生。
身体を動かすのが好きで、合気道が得意。
茶華道は一通りできる。
教えてくれることに、何一つ心当たりがなくて。
中途半端な私は、泣くことも受け入れることもできずに。
「そう、なんですか・・・」
一言、そう返しただけだった。
聞かされる"華月瞳"が、誰なのかわからなかった。
その夜。
独りになった病室で、やっと遅い産声を上げた。
自分がわからないことが、こんなにも怖いなんて知らなかった。
「・・・っっ、」
誰か。
「・・・助けて」
話してくれる内容の一つでもいいから、違和感なく受け入れられる何かがあったのだとしたら。きっとおぼろげでも、"本当"だと思えた。
なのに。
「どうして、何も思い出せないの・・・っ」
ぐるぐると、同じことばかり考える。
「・・・ック、・・・私は、誰なの・・・ッ」
答えてくれる人なんて、独りの部屋の中にいるはずもなかった。
どうせなら、私の身体も消えてしまえばよかったのにと、本気で思った。
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聖夜(プロフ) - 天宮さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年5月20日 23時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
天宮(プロフ) - この小説とても面白いです!これからも頑張ってください!! (2019年5月20日 20時) (レス) id: 9819c94959 (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ちゅんさん» お待たせしましたー!ありがとうございます頑張ります! (2019年3月31日 9時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん(プロフ) - 待ってましたー!!これからも更新頑張ってください!!楽しみにしてます! (2019年3月31日 1時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
聖夜(プロフ) - ラビットさん» お待たせしました!ありがとうございます頑張ります!! (2019年3月31日 0時) (レス) id: 8b1588b2b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:聖夜 | 作成日時:2018年8月14日 20時