アイドル失格

story29 ページ30

僕のシルムの苦労はあっという間に去り

また次の苦労がやって来る。




ポツンと1人で立っていれば

係員に呼ばれて「君はこっちだよ」なんて

誘導される


「「きゃーーー」」


その声にピタリと止まりキョロキョロすると、集団で手を振っている美男子の方々。

たぶんあの人たちが騒ぎの中心なんだろうな


静かにしたまえよ。


言葉にはできないから、テレパシーを送っておく。




「女子の番が終わったらすぐに準備してください」


あなたは、第４レーンですよ。

そう言われてその場所までスタスタと歩く。





「A！！」

『』


振り返ったそこに

ハニさんが立っていた。



『…お久しぶりです』

HN「うん！」



私３番目なんだよ〜見てて！めっちゃ走るから。

とグーサインを出された。


それに「はい」と単細胞な返事を返すと

満足したように「燃えてきた！」と行って

トレーニングを始めていた。


なんであんなに元気なんだろう。


走るのってキツイし、死ぬし、疲れるし

嫌なことばかりなのに



なんで頑張るんだろう。





「「「EXID!!!!!!ファイティン！！！！！」」」




ぶわっ


空気が揺れたような気がした。



HN「がんばりまーーーーすーー！！」


大きく手を振っているハニさんを見ても

未だピンと来ないでいた。



「よーい…ピッ」




機会の音がし破裂音がした後

会場は熱気で蒸される。



『…』



必死に僕の前を通り過ぎていく人たちに持った感情は

どれも醜くて幼稚である。


どうしてそんなに必死になるの？


たかがTVの収録なのに。

その言葉は酷く感じた。





「きゃーーー」


悲鳴と拍手と共に息を切らした走者達が、わらわらと集まりだす。


HN「見てくれてた?!!?」

『ね』

HN「やーペンが応援してくれると頑張らなきゃって滾るよね！！」


ペンが応援してくれているから、頑張る

その言葉の意味がわからず

ペコリと頭を下げてレーンに立った。


ひとりづつモニターに映されるけど、僕の頭はハニさんの言葉でいっぱいで

何の反応もできなかった




「やー、やはり注目はAですかね」

「先程のシルムが響いてないと良いですが」


響いてます


「ものすごい集中力です」


ただボーとしているだけ


「1人で４週は無理があるんじゃ…」



司会者がパクパクと口を動かす中

僕はまだ、ハニさんの言葉の意味を考えていた


やる気が出ない





MG「」

少しやる気になったのはマネヒョンに睨まれたから

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