彼女の答え ページ49
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漸く、思い呪縛から解き放たれてヒルデは本当の意味で“自由”となった。
愛されていた、今も愛されているのだと、シグルドのいない世界でそれでも彼女を愛してくれる人を得た。それだけで、充分だった。
「……先生、」
「ああ、もう……行くか」
「はい」
回された腕が解かれて、名残惜しげにけれどその顔は晴れやかに、ヒルデはゼファーから離れた。
白い髪、鮮やかなパープル・アイ、笑うといつまでも幼い彼女の姿を余す事なく見つめて記憶の中に刻み好んで忘れないように。もう二度と、こんな風に穏やかな会合が訪れない事を分かっていたのだ。
ゼファーはただ、穏やかな気持ちでかつての教え子を見つめ続ける。
その視線の意味を、正しく理解してヒルデはこれが最後と、口を開いた。
「先生、やっぱり兄は……ゴール・D・ロジャーという人は私の家族です。私は、家族を愛している……例え、海賊だったとしても」
「そう、だろうな……」
「海賊である兄を、甥を、麦わら帽子の少年を嫌う事も憎む事も……悪だと断ずる事も出来なかった。それが、私の
前を向いて、今度こそ一切の迷いも未練も無く全て断ち切ってヒルデは前を向いて言う。
「生まれが罪である筈がない。血筋によって定まる悪などない。私は、そう信じて自らで“正義”を証明してみせます……例え、海軍に、政府に、望まれぬ正義だとしても」
「途方もないな……辛い道になるぞ」
「はい。分かっています」
「それでも行くか、ヒルデ」
「えぇ、私は……行かねばならない。立ち止まらずに、歩み続けなければならない」
「そうか……そうか」
これ以上、ゼファーがヒルデに告げる事は無かった。お互いにそう納得し、理解して、今度こそヒルデは大切な恩師に背を向け歩き出した。
ウィーブルの待つ船へ歩みを進め、もう再び振り向く事はない。
そして、もう二度と迷いも未練もなかった。
裏切りと苦悩の果てに最後、彼女は答えを得た。
今度こそ、さようなら。
私の愛した人。私の愛した場所。私の愛した正義。
ブリュンヒルデは、愛を抱いて裏切って信じる物の為に戦った。きっとこれからもずっと、そうするだろう。
「さようなら、
去り際に残された、そんな言葉を聞いてゼファーはニヤリとあくどい笑みを浮かべて言った。
「……生憎、俺ぁ海賊の言う事なんざ聞かねぇよ」
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きょ(プロフ) - こんなに胸が締め付けられて、感動するお話は初めてです。どれだけ言葉を重ねても、作品を前にすると薄っぺらくなりそうなので一言、素晴らしい作品ですとお伝えできれば嬉しいです。 (2021年3月31日 23時) (
レス) id: 4c3e312f20 (このIDを非表示/違反報告)
カラフィナ(プロフ) - アルっさんさん» ドゥムジさん、その節（イベント）はお世話になっておりますどうぞこれからも宜しくお願いします……（ありがとうございます。確かにヒルデ＝ブリュンヒルデという訳ではないのですが、限りなくそれに近い解釈で大丈夫です。私も見ないな〜と思って書きました。） (2019年9月30日 11時) (レス) id: bf6d2ed987 (このIDを非表示/違反報告)
アルっさん(プロフ) - とても素敵ですね。この作品がいつか多くの人の目に留まることを祈っています。ドゥムジです。(偉そうな口聞いてすみません応援しております。英雄王ならよく見ますがブリュンヒルデ(の様な夢主)が主人公なのは初めて見るので続きめっちゃ楽しみにしております。) (2019年9月30日 10時) (レス) id: cdae6f79c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カラフィナ | 作成日時：2019年8月10日 10時
