その生き方に祝福を ページ47
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ヒルデの正義は誰が為に存在した。
誰か、1人の為にだって。
海軍の正義は世の為、人の為と謳いながらその実“世界政府”の為に存在していた。
それでもまた、人の為に在る事は1人の為にも在るというヒルデの正義と通ずると信じた。
そして、その正義と相対する“悪”とは世界政府にとって不都合を事を言う。
その為の正義で在るのだと、ロジャーの時を発端にしてエースの公開処刑という形で表されてしまったのが全ての始まり。そして終わり。
『生まれて、来た……っ、ただ、それだけ、が罪な筈がないっ！！』
ヒルデは嘆き、絶望し、拒絶に狂った。
悪の為でなく生きる人の為に正義を願ったヒルデ。
それでもと、愛を、信頼を持って生きていた。
それは間違いなく、彼女の正義だった。
だから、嘆いて迷って、分からなくなってしまった。
「分かってて、愛した……違うのか？」
「……いいえ。いいえ、いいえ！」
愛していたのは事実、愛せない部分を持って深く愛した。
「私、は……私の正義は、間違っていませんでしたか……？」
「……あぁ」
「海兵として、正義を背負えていましたか……？」
「あぁ」
「この愛は本物だったと、信じてくれますか……？」
「……信じない、理由が何処にあった」
真っ直ぐな言葉が、全てだった。
ポロリと、涙がまた溢れ出してヒルデにその時、あの日だまりの中で浮かぶような微笑みが滲んだ。
心から、ようやく笑って泣いた。
「その泣き癖を直せと言っていただろう……お前は、優し過ぎる」
ヒルデと交わる眼差しに宿った愛情を感じ取って、益々涙を溢れさせた。
ひび割れて歪み切った心の大切は部分を、初めて素手で撫でられ愛されて、ようやく解き放たれた気分だった。
兄の死を懸命に飲み下して、心から人々を愛して、海軍の矛盾孕んだ正義を信じて、ヒルデは戦いながら生き続けた。
傷付きながら願い続けた。
傷付けながら愛し続けた。
きっと、それがヒルデガルドの生き方だった。
「先生……ゼファー、先生……！！」
ヒルデは泣きながら笑って、走った。
縋り付くように、ゼファーの胸元に飛び込んで抱き付く。
震える小さなヒルデを、男は何も言わずに抱き締める。
全身を包む温もりと、太い腕と大きな掌の感触がいつかのロジャーを彷彿とさせて苦しい。
けれど離さないで、と囁きを漏らしたのは紛れもない本心だった。
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きょ(プロフ) - こんなに胸が締め付けられて、感動するお話は初めてです。どれだけ言葉を重ねても、作品を前にすると薄っぺらくなりそうなので一言、素晴らしい作品ですとお伝えできれば嬉しいです。 (2021年3月31日 23時) (
レス) id: 4c3e312f20 (このIDを非表示/違反報告)
カラフィナ(プロフ) - アルっさんさん» ドゥムジさん、その節（イベント）はお世話になっておりますどうぞこれからも宜しくお願いします……（ありがとうございます。確かにヒルデ＝ブリュンヒルデという訳ではないのですが、限りなくそれに近い解釈で大丈夫です。私も見ないな〜と思って書きました。） (2019年9月30日 11時) (レス) id: bf6d2ed987 (このIDを非表示/違反報告)
アルっさん(プロフ) - とても素敵ですね。この作品がいつか多くの人の目に留まることを祈っています。ドゥムジです。(偉そうな口聞いてすみません応援しております。英雄王ならよく見ますがブリュンヒルデ(の様な夢主)が主人公なのは初めて見るので続きめっちゃ楽しみにしております。) (2019年9月30日 10時) (レス) id: cdae6f79c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カラフィナ | 作成日時：2019年8月10日 10時
