出会いと期待 ページ42
.
先生と生徒。
それが二人の出会いだった。
『お初にお目にかかります、シグルドリーヴァー・ヒルデガルドです。ゼファー教官でしょうか？』
『そうだが……なんだ、今年の見習いか？』
『はい！第３期生です』
『……歳は幾つだ？』
艶やかな黒髪を短く切り揃え、日焼けを知らぬ真白い肌を頬だけ少し赤く染めながらゼファーの前に立つ彼女は、小柄でどうも随分と幼いように見えた。
新兵以前の見習いと言えども、随分と若過ぎるように思えたのだ。
『今年で19歳です』
『19？クザンと同じか』
『はい』
どうやら顔つきが幼いだけでしっかり軍の適正年齢であったらしい。
子綺麗で生っ白い、卒業出来るのか正直言って不安を覚えたが、意志の強そうな瞳で真っ直ぐにゼファーを見上げるその目は何か、とても強い輝きがあった。
彼女はいい海兵になる。
その時ゼファーは何となくそう直感した。
『扱き甲斐のありそうな奴だ。期待しているぞ、ヒルデガルド』
『……勿体ないお言葉、ありがとうございます』
屈託ない言葉が、純粋に嬉しかったのだろう。
その時初めて緊張に強張る顔がふっ、と柔らかく緩んで少し幼い笑顔が浮かんだ。
喜びの色を乗せて、やはり実年齢を聞いた今でも幼く見えるヒルデに遠い昔に失った、最愛の面影を幻視して一瞬凍り付いた。
色も形も似つかぬ人が重なった事をうまく飲み込めない。
それが、やけに印象的だったのを覚えている。
ヒルデはゼファーの直感通りに、良き海兵として本当に優秀な教子だった。
格闘訓練は勿論、座学も優秀でおまけに素直で聞き分けが良い。
ゼファーの教えに従順でありながら、己の信念を確と持ち他を導く。
同期のクザンと並んでも遜色無い程優秀な生徒であり、見習いを経て海兵として身を置くようになった彼女の在り方は能力者となってより一層輝きを増すばかりだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 89人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょ(プロフ) - こんなに胸が締め付けられて、感動するお話は初めてです。どれだけ言葉を重ねても、作品を前にすると薄っぺらくなりそうなので一言、素晴らしい作品ですとお伝えできれば嬉しいです。 (2021年3月31日 23時) (
レス) id: 4c3e312f20 (このIDを非表示/違反報告)
カラフィナ(プロフ) - アルっさんさん» ドゥムジさん、その節（イベント）はお世話になっておりますどうぞこれからも宜しくお願いします……（ありがとうございます。確かにヒルデ＝ブリュンヒルデという訳ではないのですが、限りなくそれに近い解釈で大丈夫です。私も見ないな〜と思って書きました。） (2019年9月30日 11時) (レス) id: bf6d2ed987 (このIDを非表示/違反報告)
アルっさん(プロフ) - とても素敵ですね。この作品がいつか多くの人の目に留まることを祈っています。ドゥムジです。(偉そうな口聞いてすみません応援しております。英雄王ならよく見ますがブリュンヒルデ(の様な夢主)が主人公なのは初めて見るので続きめっちゃ楽しみにしております。) (2019年9月30日 10時) (レス) id: cdae6f79c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カラフィナ | 作成日時：2019年8月10日 10時
