愛していると抱き締めた ページ38
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ただ単純に、ウィーブルは言葉通りに無邪気だったのだ。
裏を返せば、無知だった。
罪悪感など心にも抱かず、母親の言葉に従うだけの幼子と何ら変わらない。
素直と言えば聞こえはいいが、それまでだ。
「白ひげ海賊団の、隊長達を襲った、のも母親の指示、ですね……！？」
「そーだど！」
「なんて、事を……あぁ、ウィーブル！」
ヒルデと話せる事が堪らなく嬉しいのだろう。
終始笑顔のウィーブルに、もう、抑え切れない感情のまま槍を下ろして駆け寄っていた。
「っつ……！！」
言葉に出来ず、抱き締める。
あんなに小さかった幼子は、もうヒルデの腕になど収まりきらない程大きく成長している。宙を蹴って、顔の前まで飛び上がると太い首に腕を回す。
懐かしいあの頃に戻ったように、強く優しく抱き締める。
ウィーブルは突然の抱擁に少しだけ驚いて、だがすぐにそれは嬉しそうな笑顔を浮かべてヒルデを抱き締め返した。
つい先程まで、それこそヒルデか割って入っていなければゼファーの片腕を切り落とさんとしていた手とは思えない程に、優しい手付きだ。
その温もりに、ヒルデは泣きたくて堪らない気持ちになった。
「あっだかいなぁ、ヒルデねーたんは」
噛み締める様に、嬉しそうな声で呟く。
その声を間近で拾い視界が歪み、グッと堪えてやり過ごす。
こんなにも動揺してしまうのはきっと、モモンガ達教え子と違って全く何の覚悟も出来ないまま再会したからだろう。そうでなければ、こんなにも辛いだなんてありえない。
「ウィーブル、貴方、どうして……そんなにも、自らの出自を認めさせたいのですか？」
「しゅつじ？」
「親父様……エドワード・ニューゲート様の息子であるという事に、どうして拘るのですか？」
「おかーたんに言われだからだ！おで、おとーたんみたいな立派な海賊になりでぇ！！」
だから、周りからも認めて貰いたい。
そんな単純な承認欲求が、ウィーブルの破壊行動の根源だった。母に言われた言葉を信じて、その通りに今まで生きて行動していた。
無垢であれば無害である訳ではない。
エドワード・ウィーブルという存在はまさにその言葉通りの幼子だった。
力だけを持て余して、子供の癇癪のように破壊を行い感情のままに泣いて笑う。
愛しさから手を離したのはヒルデだというのに、こんな未来が訪れてしまった事に涙が出てしまいそうで。
「ウィーブル……」
ヒルデはただ小さく、その名を呼んだ。
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きょ(プロフ) - こんなに胸が締め付けられて、感動するお話は初めてです。どれだけ言葉を重ねても、作品を前にすると薄っぺらくなりそうなので一言、素晴らしい作品ですとお伝えできれば嬉しいです。 (2021年3月31日 23時) (
レス) id: 4c3e312f20 (このIDを非表示/違反報告)
カラフィナ(プロフ) - アルっさんさん» ドゥムジさん、その節（イベント）はお世話になっておりますどうぞこれからも宜しくお願いします……（ありがとうございます。確かにヒルデ＝ブリュンヒルデという訳ではないのですが、限りなくそれに近い解釈で大丈夫です。私も見ないな〜と思って書きました。） (2019年9月30日 11時) (レス) id: bf6d2ed987 (このIDを非表示/違反報告)
アルっさん(プロフ) - とても素敵ですね。この作品がいつか多くの人の目に留まることを祈っています。ドゥムジです。(偉そうな口聞いてすみません応援しております。英雄王ならよく見ますがブリュンヒルデ(の様な夢主)が主人公なのは初めて見るので続きめっちゃ楽しみにしております。) (2019年9月30日 10時) (レス) id: cdae6f79c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カラフィナ | 作成日時：2019年8月10日 10時
