海賊王の死 ページ13
だから。
だから、その愛が失われた時。
きっと───。
『俺の財宝か？欲しけりゃくれてやる……』
その言葉が鼓膜を震わせる。
物陰から盗み見る、信じられない光景から目が離せなかった。
『探してみろ。この世の全てをそこに置いてきた！！』
最期の言葉と共に落とされた首。
断頭台を取り囲む群衆の場違いな歓声すら、聞くに耐えない。
頬を伝う水、それは気付かぬ内に溢れ出した涙。次から次に押し寄せて溢れる水滴を止める事も出来ず顔を両手で覆って崩れ落ちた。
沸き立つ広場とは対照的に、ヒルデのしゃがみ込む路地裏には人影一つ見当たらない。それだけが、僅かな救いだった。
「っあ……に、さ……にい、さん……兄さん……っ！！！！」
悲しくて悲しくて悲しくて、何処にも、誰にも明かせない嘆きを我慢出来なかった。
形振り構わずに叫んでしまいたかった。大声で泣いて、慟哭を孕んだまま狂いたかった。
ヒルデはよりにもよって、世界で唯一己を愛してくれた最愛を見殺しにしたのだ。あんなに、こんなにも、心の底から愛していたのに。見殺しに、した。
人はいつか死ぬ。
何をしようと、何を足掻こうとも必ず死ぬ。
神の血を引く者も、始まりがあるモノにはいつかの終わりが用意されている。
海賊王、ゴールド・ロジャーはもう二度とヒルデの手が届かない場所へと行ってしまった。もう、帰らない。
ただ一人だった。
海賊王は、ロジャーは、ヒルデの兄は。
あの人、一人だけだったのに。
受け継がれる意思、絶える事のない人の夢、それらはやがで時代の大きなうねりとなる。
けれど、それが救いだなどと、どうして思えようか。
ロジャー、ロジャー、ロジャー！嗚呼！
何処に行ってしまうの、ねえ。
「私、を……置いて、いかないで……！！」
ねえ。
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きょ(プロフ) - こんなに胸が締め付けられて、感動するお話は初めてです。どれだけ言葉を重ねても、作品を前にすると薄っぺらくなりそうなので一言、素晴らしい作品ですとお伝えできれば嬉しいです。 (2021年3月31日 23時) (
レス) id: 4c3e312f20 (このIDを非表示/違反報告)
カラフィナ(プロフ) - アルっさんさん» ドゥムジさん、その節（イベント）はお世話になっておりますどうぞこれからも宜しくお願いします……（ありがとうございます。確かにヒルデ＝ブリュンヒルデという訳ではないのですが、限りなくそれに近い解釈で大丈夫です。私も見ないな〜と思って書きました。） (2019年9月30日 11時) (レス) id: bf6d2ed987 (このIDを非表示/違反報告)
アルっさん(プロフ) - とても素敵ですね。この作品がいつか多くの人の目に留まることを祈っています。ドゥムジです。(偉そうな口聞いてすみません応援しております。英雄王ならよく見ますがブリュンヒルデ(の様な夢主)が主人公なのは初めて見るので続きめっちゃ楽しみにしております。) (2019年9月30日 10時) (レス) id: cdae6f79c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カラフィナ | 作成日時：2019年8月10日 10時
