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廿陸 ページ32

杏寿郎

初めて、少し心を開いてくれたような気がした。




最初はただただ、許せないと思った。




お館様に刃を向けて、言葉も荒く。


この刀で焼き付くそうかとも思った。



それをお館様の前でもあるから刀を抜くのを必死で抑えた。




だが、それ以前に、彼女が兄を失ったこと。音と夢という2人もまだ見つかってないことを聞いて、自制がきいた。


本当は愛に満ち溢れた少女なのだと、手合わせをした時、お館様に言われた時に気づいた。



鷹を守り、俺を兄と似ている、そう言った。




杏寿郎「……君の兄は至極良い兄だったのだろうな」




目を細めてそう言うと、彼女は目を丸くした。




「…そう、だなあ」




懐かしむように右手で左手の肘あたりを摩った。




杏寿郎「それは兄の羽織か?」




「そう、ちなみに言うと刀もね」



……少女の顔は、いつもの無表情とは違い、慈愛に満ちた優しい顔をしていた。




杏寿郎「そうか」




「私の兄は、本当に格好良かった」




なんだか、それ以上聞くのは野暮な気がしてやめると、彼女から口を開いてくれた。




「それと、あんたにも似てたよ。

真っ直ぐで、暖かくて…さ。どんなに暗いときでも太陽みたいに照らしてくれて

希望と愛を絶やさないような人だった。」




だから私はあんたに姿を重ねちゃうんだ。そう悲しくも笑ってくれた。




杏寿郎「……愛する人は先に死ぬ、そう言ったな」




ふと、思い出したのだ。辛そうな顔でそう言う少女を。




「ああ、事実だ」




杏寿郎「俺は柱だ!」




彼女は俺が急に大きい声を出したのに吃驚したのか身体をびくつかせた。




「いや、知ってるけど」




杏寿郎「だから強い!」




嘘。本当な強くなんてない。だが、彼女となんとか関わりたい。

最愛の兄に似てると言われたのだから、それ相応の対応をしたい。




「お、おう」




杏寿郎「俺なら君より先に死なないと約束できる!」




「!」




まるで好物を与えられた幼子のように、目をキラつかせた。




「本当か?」




杏寿郎「ああ!」




でも、彼女の口から出たのはまだの言葉だった。




「そんなの、約束すんなよ…。

人間なんていつ死ぬか分かんねえんだぞ」




杏寿郎「俺も、分からない

だから、不確定な約束を俺としないか?
それもそれで楽しそうだろう?」




馬鹿じゃないの、そう言って通り越してしまった彼女だが、去り際に




「……面白いかもな」



そう言ってくれた。

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ピエロ(プロフ) - ひーちゃさん» ありがとうございます!!そう言っていただけて嬉しいです…! (2020年2月28日 11時) (レス) id: ac5457e183 (このIDを非表示/違反報告)
ひーちゃ(プロフ) - めーっちゃよき!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3b4ed7c89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピエロ | 作成日時:2019年1月21日 21時

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