【ハイキュー】影山飛雄が溺愛する彼女

沢山、いっぱい ページ22

火照った頬と体を冷ますために、廊下に出ていく




大会に出た人達を労っているのか、廊下に出る人はほとんど居なかった




近くにあったベンチに腰を下げて、ぼうっと上を向く




(一瞬だったな)




何もかもが、一瞬だった




芹沢に事実を言われるのも、彩と2人で喜んだ時も、A1人に向けられる歓声を聞いたのも、クラウンを受け取ったのも、彼のことをあんなに細かく話したのも。




(でも、楽しくて、……。

なんか上手く言葉に出来ない)




楽しかったと、疲労で目を瞑りかけた時




影山「A！」




運命みたいに、影山の声が響く




閉じかけた目を開けると、走ってくる影山が見える



(え、なんで)




なんでか考える前に体が動いて影山を抱きしめに行く




影山「うおっ、」




そう呻きながらも力いっぱい抱き返してくれる




Aの足が床から離れて、抱きしめた状況にも関わらずその場でクルクル回る




「……会いたかったよ」




影山「？演奏する前に1回会ったろ」




「うん、でも、会いたかった」




普段は言わないような甘える声




床に足が着いても、抱きしめる力は変わらない




高い身長を持つ影山の首に手を回し、胸に、これでもかというくらい抱きしめる




影山「……ぉ、おつかれ、っす」




「……うん、ありがとう」




ふにゃりと、力のない笑顔を腕の中で見せるAに、胸がどうしようもなく高鳴る影山




影山「〜、きす、してもいっすか」




「飛雄くんってこういう時になんか、大胆で敬語だよね」




影山「うっ」




「あと、見られちゃったら恥ずかしい、です」




だから今は、と口を優しく抑えるA




影山「……でも、あの人はやってた」




彩が沢山、Aを抱きしめていたのだから、せめてそれを上回るキスを。




影山が、いっぱいする、と言っていたように。




女子相手にヤキモチ妬くの？と思ったが、愛しさが募る




「今度、ね？」




影山「……じゃあこれで」




その瞬間、Aの額に影山の口が降りる




短く鳴ったちゅ、という音にAが頬を染める




影山「これで我慢するから、今度覚えとけよ」




にやりと意地悪い笑顔をうかべる




(……あぁ、幸せだな)




うん！と笑って、また影山の胸に顔を埋める




愛してるなんて言葉じゃ、伝えきれないほどに好き。


在り来りで、ありふれた言葉かもしれないけど、とAは1人思う。

おわかれ→←君

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