向き合う相手 ページ5
嫌いな門を潜り、自室へ帰ってからずっと消太から貰ったチラシを眺めてる。
『…お祭り…、お祭り』
いつぶりだろうか…。
何度も言葉にして、遠足前に浮き足立っている子供のようにとてもわくわくしている。
休日に外へ出るのだって、それこそ誰かと一緒に、消太と一緒に出掛けられるなんて思わなかったから。
また、胸がぎゅって苦しくなる。
『？……。…まさか、ね』
学校でも感じた矛盾した感覚。
きっとこれは勘違いだ。だって私には無縁なものだから。
「─お嬢様。いらっしゃいますか？」
控え目な声にノック。
思考の海から引き戻されて一拍遅れて返事を返す。
『…はい』
扉が開くとそこには小さい頃からいる使用人の女性。
あまり関わる事もなく、彼女が私の元に来る時は大抵、あの人達からの呼び出しだけ。
『わざわざありがとうございます…。すぐ行きます』
そう言い、チラシを机の引き出しにしまって彼女の後を付いて部屋を出る。
長い廊下を歩く度に、心が冷え切った別の物に代わっていく。
喉や胸を締め付ける不快感も、吐き出してしまいそうな気持ち悪さも…、全部無理やり抑え込んで蓋をした。
『お待たせしました…』
広くて大きい父親の書斎部屋。
呼び出した本人は机に向き合いこっちを見ようともしない。一緒の部屋にいる事すら嫌っているから…当たり前か。
部屋を見渡しても母の姿はなかった。
「学校は長期休みに入ったらしいな」
『…はい』
「分かっているだろうが、外出は控えるように。
必要な物があるなら使用人に言え。以上だ」
『お父様…』
「出て行け」
『あの…、話が』
「出て行けと言っているッ！」
『っ…』
この人は、いつもそうだ。
言うだけ言って、私に発言権を与えない。
言葉に纏った圧に身体が反射的に萎縮する。
いつもの私ならすぐに従って出て行っただろう。
でも、
震える手を握りしめて、父親を真っ直ぐ見据えた。
『…学校の友人から、お祭りに誘われました』
口答えしたこと、祭りと言う言葉を聞いて父親がﾋﾟｸﾘと反応して顔を上げる。射抜くような鋭い目が私に向いていた。
怖い。怖くて本当は今すぐ逃げたい気持ちでいっぱいだ。
でも、今だけは
今だけは逃げたくなかった。
『その日だけでいいです。私に友人と過ごす時間を下さい』
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ムツキ(プロフ) - 面白かったです！続き楽しみにしています！ (2022年5月22日 13時) (
レス) id: 82e68addf8 (このIDを非表示/違反報告)
シュリ(プロフ) - りのさん» りのさんコメントありがとうございます(*^^*)更新遅れてしまいすみません(--;)次回も楽しみにして頂けたら幸いです！ (2021年11月19日 20時) (レス) id: 6347914aa2 (このIDを非表示/違反報告)
りの(プロフ) - 更新嬉しいです！これからも頑張ってください！ (2021年11月17日 18時) (レス) @page45 id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
シュリ(プロフ) - うみさん» うみさんコメントありがとうございます(*´ω`*)続きが楽しみと仰っていただいてとても嬉しいです！更新が遅れていますが、なるべく早く掲載できるように頑張ります！ (2021年9月20日 14時) (レス) id: 6347914aa2 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - すごく面白くて続きが気になります。お忙しいでしょうが更新頑張ってください。楽しみに待っています。 (2021年9月17日 20時) (レス) id: 9b9e486fdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シュリ | 作成日時：2020年4月7日 22時
