気になるの ページ12
花火が空に上がっても、
私は、彼から目を逸らせずにいた。
この一瞬を、焼き付けておきたいと思ったから。
相「？。どうした？」
見つめ過ぎたのか、彼がこちらに気付いて振り向く。
まだ少し心がザワつくけど、さっきよりは落ち着いていた。
『…花火、きれいだなぁ、て』
誤魔化すように笑って、視線を逸らす。
見上げた空には、満開の花火が打ち上がっていた。
相「…そうだな」
『うん…』
お互いそれ以上の言葉は続けず、ただ静かに花火を眺めた。
不思議と、言葉が無くてもこの空間が心地よくて、彼も穏やかな笑みを浮かべている。
気付いてしまった気持ちは、そっと胸にしまい込んだ。
────
──
ｶﾗﾝ､ｶﾗﾝ…と下駄の乾いた音が鳴る。
薄暗い帰り道。誰かと一緒にこの道を歩くのは久しぶりだ。
嫌いな道は、今は少しだけ嫌いではなかった。
あの門に触れても、手は震えなかった。
『送ってくれてありがとう、消太』
相「ああ。これくらいはな」
花火の余韻も程々に、気付けばあっという間に家に辿り着く。
相「今日は楽しかった。また夏休み明け、だな」
『…うん』
明日から夏休みが終わるまで、この家から出る事はない。
今までと変わらない日常なのに、とても寂しく感じた。
初めて、さよならを言いたくないと…思った。
『私も…凄く楽しかった。誘ってくれてありがとう。
暗いから気を付けて帰ってね』
楽しい時間は、終わってしまう。
せめて笑って見送ろうと笑顔を浮かべた。
相「…あぁ、ありがとうな」
消太の手が、頭に触れる。
結った髪を崩さないように、ゆっくり、優しく撫でていく。
相「すぐ会える。だからそんな寂しそうにすんな」
『、…うん』
相「また学校でな。…それじゃ、ゆっくり休めよ」
最後にもう一度目が合い、彼は困ったように笑った。
それから来た道を引き返して行く。
その背中が見えなくなるまで、私は彼を見送った。
誰ともすれ違う事無く自室に戻り、扉を閉めた途端身体から力が抜ける。
ふらつく足取りでベッドまで歩き、崩れ落ちて顔を埋めた。
『…、…』
胸がヒリ付くように熱くて、また心臓が早鐘を打って直接耳に響いてくる。
慣れない苦しさが広がるのに、それが嫌だとは思わなかった。
苦しいのに、苦しくない…矛盾した感覚。
『………すき』
…言葉にすれば、よく分かる。
友達じゃなくて、ヒーローでもなくて。
私は彼が…
『消太が、…好き』
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ムツキ(プロフ) - 面白かったです！続き楽しみにしています！ (2022年5月22日 13時) (
レス) id: 82e68addf8 (このIDを非表示/違反報告)
シュリ(プロフ) - りのさん» りのさんコメントありがとうございます(*^^*)更新遅れてしまいすみません(--;)次回も楽しみにして頂けたら幸いです！ (2021年11月19日 20時) (レス) id: 6347914aa2 (このIDを非表示/違反報告)
りの(プロフ) - 更新嬉しいです！これからも頑張ってください！ (2021年11月17日 18時) (レス) @page45 id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
シュリ(プロフ) - うみさん» うみさんコメントありがとうございます(*´ω`*)続きが楽しみと仰っていただいてとても嬉しいです！更新が遅れていますが、なるべく早く掲載できるように頑張ります！ (2021年9月20日 14時) (レス) id: 6347914aa2 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - すごく面白くて続きが気になります。お忙しいでしょうが更新頑張ってください。楽しみに待っています。 (2021年9月17日 20時) (レス) id: 9b9e486fdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シュリ | 作成日時：2020年4月7日 22時
