七十一 ページ26
『私が呪霊と会ったことを秘密にしてたのは、恵を人質にされてたから。会ったことを誰かに話したら私の大切な人を内通者が殺すって言われて。…黙っててごめんなさい』
五条「いや、いいよ。僕も考えが足りなかった。…それにしてもこんな形で婚約がなくなるとは思ってなかったな」
『やっぱなくなるんだ』
五条「そりゃそうでしょ。婚約相手が呪霊と通じてました〜なんて五条家の面子丸潰れだし」
彼と私の間に無言の時間が流れる。
昔は何も感じなかった、寧ろ心地よかったこの空白の時間が、今はとても気まずい。
五条「A」
『ん…?』
五条「僕の名前呼んで」
何を思ったのか彼は唐突に目隠しを取り、綺麗な双眸で私の姿を捉える。
『…………悟』
思っていたよりあっさりと言葉にはできたものの、羞恥は残る。
彼は満足そうに微笑んで、私の左手を握った。
五条「…本当にごめんね。起きたばかりなのに沢山話して」
『いいよ。知りたいことも知れたし。…仕方ないことだって割り切ったつもりでも、心の内ではずっと気になってた。どうして悟…が私のこと嫌うようになったのか』
だから知れて良かったと言えば、彼は申し訳なさそうに笑う。
そんな彼を見て、有栖院が言っていたことを思い出した私は、本人に聞いてしまおうと疑問を口にした。
『有栖院が、悟はずっと私が好きだって言ってたんだけど本当?』
これが本当であれば、悟が私に対して強引に口付けをした理由にも納得がいく。
五条「………それ、本人に聞く?」
『自分で考えた結果、貴方に聞こうと判断した』
五条「前に言ったこと、もしかしなくても根に持ってるよね?……悪いのは完全に僕だけど」
『それで?』
悟の瞳をじっと見つめ返して、言い逃れできないようにしていれば、彼は短く溜め息をついた後に小さな声で
五条「…好きだよ」
と言った。
その言葉に安堵した自分がいて。
『…あの…今更で申し訳ないんだけど』
五条「ん?」
『前は蒼社の奴らと同じとか言ってごめん。本当はそんなこと思ってない』
五条「…いいよ。その後僕も無理矢理キスしちゃったでしょ」
『それはそうだけど』
私にとって蒼社の奴らと同じという言葉は、これ以上ない程の侮蔑の言葉だったから。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時