七十九 ページ34
『有栖院扇』
後ろ姿に声を掛けると、彼女は肩をびくりと震わせた。
人がいない細い路地裏。
そこに彼女はいた。
有栖院「……っ」
こちらを見た彼女の顔、腕や足には所々包帯が巻かれており、私を見る目には負の感情しか含まれていなかった。
『人間である貴方が、私の術式を食らって生きてるのは凄いと思うけど、立場逆転したね』
あの日死にかけていた私は今こうしてピンピンしているというのに、彼女はボロボロのまま。
反転術式が使えない彼女には自分の傷を癒す術がなかったのだろう。
有栖院「何で死ななかったの…?!あんたが死ねば私は高専に戻れた…悟と一緒にいられたのに」
『その悟が私を助けたから』
有栖院は大きく目を見開く。
『私は貴方が嫌いだ。嫌いだけど幼い頃の私と重ねて見てもいた』
決して叶うことのない恋。
苦しい、報われない恋。
『…私は多分、今も悟のことが好きなんだと思う』
私の自由を願ってくれた。
本当の名前を教えてくれて、微笑んだ彼の姿はこれから先、一生忘れられないと思う。
『彼の傍にいたかったのなら、貴方は呪霊と手を組むべきじゃなかった』
有栖院「分かった風に言うな!!!」
彼女にも色々な事情があって、それなりに辛い経験もした筈だ。
けれど私は優しくない人間だから、他人を尊重できない人間だから。
『…悪いけど、私はもう自分の気持ちを誤魔化したりはしない』
有栖院と悟が婚約していると聞いて動揺したのは、やっぱり彼のことが好きだったからだと今更ながら理解して。
有栖院「あんたなんか!!死ねばいい!」
『それは無理。…電導呪法___発燭』
彼女は意識を失い、そのまま倒れた。
きっと彼女は分かっていた。
私が自分より強いということを。
それなのに逃げずに立ち向かってきたのは、それ程私が憎かったからなのか、意地というものがあったのか。
『両方かな』
なんて呟いて、夜蛾先生に連絡する。
『…Aです。有栖院扇を戦闘不能にしたので誰か送ってくれません?…え?……彼が?』
五条「そういうことだったんだ」
陰から現れた悟に、私は溜め息をついた。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時