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悟という少年に初めて会ってから1週間が経とうとしていた。



未だに私は自分のことについて答えを出せずにいる。





「よぉ、人形」





聞き覚えのある声に顔を上げれば、いつかのように彼の綺麗な目が私を映していた。





『…人形って呼ぶのやめて。私にはちゃんとAっていう名前があるの』





私の言葉が意外だったのか、彼は分かりやすく驚いた。





『悟君、普通って何?』




「はぁ?聞く相手間違えてんだろ」




『だって…』





こんなことを聞ける相手なんて、私の普通…当たり前を否定した彼しかいない。





「前に言ったよな?自分で考えろって」




『う…』





彼の言葉は相も変わらず冷たくて、刺々しい。





「自分のやりたいことをしろよ」





母と同じようなことを言った彼に、恐る恐る自分のやりたいと思ったことを伝える。





『…外に行ってみたい』





生まれてから今日まで敷地外に出たことはない。



1度私の稽古を見てくれている呪術師に相談してみたけれど、その必要はないと一蹴されてそのままになっていた。





「あっそ」





彼は素っ気なく答えたかと思うと、私の手を引いて歩き出す。





『あ、え、悟君!?』




「外に行きたいんだろ」




『でも!』





誰かに見られてしまえば私だけでなく悟君まで怒られてしまうんじゃないかと不安に思った私を振り返ることなく悟君は言う。





「抜け道くらい幾つか知ってる」





彼の言葉はどこまでも自信に満ち溢れていて、不安を感じさせなかった。











『凄い…』





悟君に連れられて歩いた外の世界は未知で溢れていた。



母が読んでくれる物語のおかげで名前は知っていたけれど、実際には見たことがなかったものたち。



わくわくするような楽しくなるような感覚になったのはこの日が初めてだった。





『…悟君、ありがとう』





色々な場所を見て回って落ち着いた頃、私の手を引いて蒼社の敷地に戻る彼に言った。





「…別にお前の為じゃない」




『それでもありがとう』





私の為じゃなかったとしても、彼はこうして私を連れ出してくれた。





『…また会える?』





気付けばそんなことを聞いていて。



彼に出会うまで何も望んだことがなかった私の2つ目の願い。





「気が向いたらな」





彼の返事に私は笑顔で頷いた。

六→←四



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茜雫 - 書いている世界観が好きで何度も読んでいるので閲覧数の15分の1は私かもしれないです笑 (2020年11月29日 22時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - 茜雫さん» えぇ!前作から見てくださっていたんですか!?ありがとうございます!とても嬉しいです…これからも面白いと思ってもらえるよう、無理せず頑張ります!コメントありがとうございました!! (2020年11月29日 18時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
茜雫 - 初めまして!続きを楽しみに読みながら…何度も読み返してます笑前作同様、とても面白い内容なので、続きが楽しみです!無理せず更新頑張ってください! (2020年11月29日 18時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - いーすとさん» コメントありがとうございます!世界観が好きだと言ってもらえて嬉しいです。前作とは少し違う感じに書きたいなと思っていたので…これからも頑張らせていただきます!!ありがとうございます!! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
いーすと - なんか世界観がめちゃ好きです!これからも頑張って下さいね!読み続けます!! (2020年11月29日 15時) (レス) id: e22cc70c93 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613  
作成日時:2020年11月27日 21時

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