緋色の契り【呪術廻戦】

三十三 ページ34

夏油「意外だな。理由を聞いてもいいかい？」





傑君は本当に意外そうに言った。





『守るべき人が増えたから。呪詛師になったら守れなくなる』





思い浮かぶのは恵の顔。



初めて会った日の翌日から、私は甚爾の息子である彼によく会いに行っていた。





夏油「…残念だよ。その人間がいなくなれば協力してくれるのかな」




『変なことしたら塵1つ残さないけど』




夏油「本気だね。…私はここで失礼するよ。君と戦うのは避けたい」





傑君は自身の呪霊に乗ってさっさといなくなってしまう。





『…傑君に会って逃したって知られたら五条様にまた何か言われるんだろうな』





黙っていよう。



ビルから出て空を見上げれば、いつ雨が降ってもおかしくないような空模様だった。



自分で降ろした帳を解除して向かうのはいつもの場所。





伏黒「……暇なの？」




『辛辣だね』





恵の家の前まで来て、学校帰りの彼と鉢合わせした数秒後のやり取り。





『やっぱこんな年上の婚約者嫌？』




伏黒「別に。それに嫌って言ってもどうにもならないんだろ」




『そんなことないよ。恵が本当に好きな人を見つけたら解消してくれていいから』





婚約なんて彼を守る為の手段に過ぎないのだから。





伏黒「確かあの五条って奴も同じこと言ってたな」




『え？悟君が来たの？』





思わず昔の呼び方をしてしまい、口を塞いだ私に構うことなく恵は続ける。





伏黒「Aとの婚約が嫌ならいつでも言えって。すぐに取り消すからって」




『……嫌がらせ？』





五条悟は本当に分からない。





伏黒「あいつなんなの？俺の顔見るといつも変な顔すんだけど」




『彼、一応は凄い人なんだよ。性格に難ありだって同期の子には言われてるけど』





その同期の子とは言わずもがな家入硝子。





『…私はそろそろ帰るよ。ごめんね、邪魔して。津美紀ちゃんによろしく』





そう言って帰ろうとした私の手を恵は掴んで。





伏黒「…邪魔じゃない。津美紀も喜ぶだろうし上がってけよ」





恵の表情を見てすぐに頷いた。



恥ずかしいだろうに勇気を出して言ってくれた言葉だと分かったから。



それに彼の願いを無下にする理由もなかった。

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