三 ページ4
『悟君って綺麗だね』
「は?」
私の言葉に彼は一瞬目を丸くしたけれど、すぐ不機嫌そうな表情に戻る。
「お前バカって言われない?」
『…うーん…言われないかな。友達とかいないし』
私が関わるのはいつも大人ばかり。
厳しい指導はされても、罵倒されたような覚えはなかった。
『どうしてここにいるの?』
「…別に。逃げてきただけ」
『逃げたくなるようなことがあったの?』
「…あそこにいると生きるのが嫌になる」
『そっか』
目の前の悟と名乗った少年は私とあまり歳も変わらないように見えたのに、どこかずっと大人びていた。
『…もしまた逃げたくなったらここに来てもいいよ。ここなら私以外に人来ないし』
彼が蒼社家の人間なのか、はたまた外からこの蒼社の敷地に忍び込んだ人間なのかは分からなかったけれど、少なくとも悪い人ではないと判断して私は彼にそう言っていた。
「何それ、恩でも売るつもりかよ」
『困ってる人は助けるのが普通でしょ?お母さんも言ってたよ』
「そ」
彼が終始不機嫌な理由が当時の私には分からなかった。
『あ、でも!お昼以外は来ないでね。私稽古でいないから』
「稽古って…ずっと?」
『うん。お昼と寝る前以外はずっと。凄い人の役に立つ為に強くならないといけないから』
「なんだよ、それ」
『え?』
「自分の為ならまだ分かる。でも他人の為に強くなる?は?意味分かんねぇし」
私の当たり前をいとも容易く否定した彼。
『でもそうやって言われて…』
「だったらお前はその他人の為に死ねって言われたら死ぬのかよ」
すぐに返答できなかった。
「そうやって言われた?だから自分で考えることもせず、ただただ言われたままに、他人の指示通りに生きる?お前は人形かよ」
『…分かんないよ。私には悟君が言ってること全然分からない』
私はそうあるべきだと言われたことをしてきた。
なのに目の前の彼はそれを否定する。
「帰る」
一言告げて彼はいなくなった。
呆然としている私を置いて。
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茜雫 - 書いている世界観が好きで何度も読んでいるので閲覧数の15分の1は私かもしれないです笑 (2020年11月29日 22時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - 茜雫さん» えぇ!前作から見てくださっていたんですか!?ありがとうございます!とても嬉しいです…これからも面白いと思ってもらえるよう、無理せず頑張ります!コメントありがとうございました!! (2020年11月29日 18時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
茜雫 - 初めまして!続きを楽しみに読みながら…何度も読み返してます笑前作同様、とても面白い内容なので、続きが楽しみです!無理せず更新頑張ってください! (2020年11月29日 18時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - いーすとさん» コメントありがとうございます!世界観が好きだと言ってもらえて嬉しいです。前作とは少し違う感じに書きたいなと思っていたので…これからも頑張らせていただきます!!ありがとうございます!! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
いーすと - なんか世界観がめちゃ好きです!これからも頑張って下さいね!読み続けます!! (2020年11月29日 15時) (レス) id: e22cc70c93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年11月27日 21時