30.記憶がないらしい ページ30
控えめなノックをしてから暫く訪れていなかった寮の個室に入れば、ベッドから窓の外を茫然と眺める五条悟の姿が目に入った。
黙っていれば綺麗なのに。
五条悟は私を一瞥するが、興味を持たなかったらしく、再び視線を窓の外に映した。
五条「誰」
『あ、ごめんね。私は三年の二条Aって言います』
五条悟の冷たい声に、“うわ、本当に忘れてやがるこの野郎"と思ったが顔には出さない。なんたって私はプロだからな。
遡ること十分前、私は家入硝子からとんでもないことを聞いた。
なんでも五条悟が任務中にミスをして呪われたのだとか。
本来は傑君と二人の任務だったらしいが、彼らは今絶賛喧嘩中であった為に別行動をし、結果五条悟だけが呪われたらしい。
これが大したことない呪いだったら良かったけれど、さっきの五条悟の発言から分かるように大した呪いだったわけで。
家入硝子が言うには、クラスメイト以外の人間のことを忘れてしまっている…と。
記憶がないなら避ける意味もないかと様子を窺うついでにこの部屋まで来たわけだが。
予想以上にとんがってるな、五条悟。
五条「先輩が何の用ですか。俺生憎今記憶ないらしいんで、何言っても無駄ですよ」
ふむ。今の言い方から察するに五条悟自身は自分が記憶を失ったと理解していないのか?
自身のクラスメイトのみが交友関係の全てだと?
『用がなかったら来ちゃ駄目かな?私一応悟君の彼女なんだけど…』
と言ってみれば。
五条「…は?いや、そういう嘘やめてもらって。なんであんたみたいな猫被りと俺が付き合わなきゃいけねぇんだよ」
『………え』
待って…?なんで私が猫被りなことを知ってんの?君。
記憶ないんだよね?え?
五条「何驚いてんだよ。普通分かるだろ」
『いや、現在進行形で皆分かってないから驚いてんだけど』
五条「声のトーン全然違ぇじゃん、怖」
怖いのは記憶がない状態で私の猫被りを見破った君だよ、五条悟。
……というかまさか。
『ねぇ、五条悟。君もう一回私のことを忘れても一発で猫被りだって見破る自信ある?』
五条「自信しかない」
『………』
ということは、だ。
私があの日人気のない夜中の寮の共有スペースで愚痴を言ってようが言ってなかろうが、五条悟は私が猫被りだってことに気付いていたわけ…?
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刹葉(プロフ) - みかさん» コメントありがとうございます!個人的には不安ばかりで、そんな嬉しいことを言ってくださる方がいるとは思ってもおりませんでした…!ただただ嬉しいです、ありがとうございます!!これからも楽しんでいただけるような小説が書けるよう精進します!!✌️ (2022年2月18日 21時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - コメント失礼します。完結お疲れさまでした…!!最後の夢主ちゃんの自分の気持ちに気づく描写大好きです…!刹葉さんの書く文章凄く凄く好きで、これからも応援してます!コメント失礼しました〜!! (2022年2月18日 20時) (レス) @page43 id: 38ecdec85a (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - kanameさん» コメントありがとうございます!ひぇぇ…嬉しいです…!このコメントを見て私もニヤけてます(( これからも楽しんでいただけるよう頑張ります(о´∀`о) (2022年2月5日 3時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - 私「先生、ニヤけが止まりません」私「諦めなさい」私「OK」という脳内会議を毎回してますwww更新楽しみにしています! (2022年2月5日 1時) (レス) @page21 id: 7565f8d7cb (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ちゃんちゃさん» コメントありがとうございます…!更新楽しみにしてくださって本当嬉しいです!性癖に刺さったのなら良かった…期待に応えられるよう、これからも頑張ります!^ ^ (2022年2月1日 21時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作成日時:2022年1月27日 15時