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五条side
一年前の俺は確かにAを見返してやろうと、弱みの一つでも握って大勢の前で馬鹿にしてやろうと決めていた筈なのに。
なのに。何故。
「あ"ぁ〜…!」
自分の部屋で枕を全力で抱き締め、呻いているのか。
「何が意外と可愛らしいところもあるんだ、だよ…!あんな風に笑うとか聞いてねぇし…」
いつの間にか俺の目的は"Aを馬鹿にし返す"ことから、"もっとAを知る"に切り替わってしまっていた。
いつどこでそうなってしまったのかは分からないが、弱点を探しているうちに、Aを観察しているうちに切り替わったのは間違いない。
折角弱点を見つけたというのに何が"バラされたくなかったら俺の言うことなんでも聞け"だ。
馬鹿か。
Aのことを知りたいと思う理由に心当たりがないわけではない。寧ろある。
あるが、まだそれを極力言葉にはしたくなかったし、知られたくもなかった。
薄々気付いてはいたが、二条Aは典型的な猫被りで、傑達が知ったなら幻滅すること間違いなし。
ただ今のところ誰かに言うつもりはない。本当のAを知っている人間は俺だけでいい。
今日のような笑顔を第三者に見られてたまるか。
「…はぁ」
猫を被っているA…所謂優等生モードのあいつの生活はいつも同じように始まり、同じように終わる、代わり映えのないものだった。
それがトリガーになってしまったのかもしれない。
代わり映えがなさすぎて、Aのことを少しずつ気に掛けるようになってしまったのだから。
気に掛けるようになった結果がこれだ。
二度目のため息をついてしまう前に携帯を操作して、手に入れたばかりの連絡先に電話をかけた。
『…え?部屋出て行ってから一時間も経ってませんけど』
意味が分からないと今にも言い出しそうだったので、さっさと用件を告げる。
「明日、デートするから空けとけ。そんだけ。…じゃ」
返事も聞かずに終話ボタンを押す。
正直彼女のフリどうこうに関しては勢いの部分もあったが、今となってはあの時の自分を褒めてやりたい。
お陰で理由がなくても傍にいられるし、何より今日のようなことも防げる。
Aには女避けになれと言ったが、実際のところは逆で、あいつに男を寄せ付けない為。
当の本人はそんなことだとは思いもしないだろうが。
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刹葉(プロフ) - みかさん» コメントありがとうございます!個人的には不安ばかりで、そんな嬉しいことを言ってくださる方がいるとは思ってもおりませんでした…!ただただ嬉しいです、ありがとうございます!!これからも楽しんでいただけるような小説が書けるよう精進します!!✌️ (2022年2月18日 21時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
みか(プロフ) - コメント失礼します。完結お疲れさまでした…!!最後の夢主ちゃんの自分の気持ちに気づく描写大好きです…!刹葉さんの書く文章凄く凄く好きで、これからも応援してます!コメント失礼しました〜!! (2022年2月18日 20時) (レス) @page43 id: 38ecdec85a (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - kanameさん» コメントありがとうございます!ひぇぇ…嬉しいです…!このコメントを見て私もニヤけてます(( これからも楽しんでいただけるよう頑張ります(о´∀`о) (2022年2月5日 3時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - 私「先生、ニヤけが止まりません」私「諦めなさい」私「OK」という脳内会議を毎回してますwww更新楽しみにしています! (2022年2月5日 1時) (レス) @page21 id: 7565f8d7cb (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ちゃんちゃさん» コメントありがとうございます…!更新楽しみにしてくださって本当嬉しいです!性癖に刺さったのなら良かった…期待に応えられるよう、これからも頑張ります!^ ^ (2022年2月1日 21時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作成日時:2022年1月27日 15時