最強が浮気しやがった【五条悟】

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夜の九時過ぎ。




未だに帰って来ない家の主に連絡でもしようと、切っていたスマホの電源を入れた時だった。




寝室のドアが開いて、目隠しもサングラスもしていない五条が私の前に立つ。




本当は怖い。




超怖いし、めっちゃビビってる。




でも言わなきゃいけないと覚悟を決めて口を開く____筈だった。




あれ…？




手に持っていたスマホは床に落ち、背中には柔らかい感触、目の前には無駄に整った顔と天井。





『五……条…？』





五条「…A、抱かせて」





『……は…？』





五条の顔を近くで見て気付いたのは、彼の目が熱っぽく、頬が僅かに紅潮しているということ。




知らない。




私は今までこんな五条を見たことがない。




こんな風に前置きもなく求められることなんてなかった。





『待ってよ、五条。意味分からん』





五条「…多分さっきまで一緒に飲んでた奴に薬盛られた」





『…え？』





呪術師にそんなことをする奴はいない。




つまり五条が一緒に飲んでいた相手は非術師で、五条にそういう薬を盛るってことは確実に女。




目の前の五条に対しては混乱している筈なのに、誰と飲んでいたのかは冷静に理解してしまう。




また。




…また会ってたんだね、小雪とかいう元カノ…若しくは私の知らない女と。




それで薬を盛られたから身近にいて一応恋人の私で処理しようとしてんの？





五条「A…」





『…無理』





近付いてきた五条の口を手で塞げば、当然五条は目を見開く。





『……悪いけどそういう気分じゃないから。離れろよ、五条』





なんで帰って来たんだよ。




薬盛った女としろよ。




そうすれば私はここまで傷付かなかったし、多分気付きもしなかった。




今夜も五条は私以外の異性といたんだってことに。




私に口を塞がれたままの五条は退こうとしないが、行為を進めようともしなかった。





『…離れろって言ってんの。聞こえてるよね？』





そこで五条は漸く私の上から退くが、何も言わない。




正しくは“言えない”かもしれない。





『硝子の家に泊まるから。お休み』





五条は何も言わないけど、私にとってはその方が良かった。




寝室を出て自身の胸に手を当てる。




自分の中の黒い感情に気付きたくはなかった。




五条の浮気相手を一人残らず殺してしまいたいなんて黒い感情には。

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