二十八* ページ29
悟さんと初めて会った日から半年くらいが過ぎたある日、私は悟さんの屋敷でとある光景を目にする。
『綺麗な人…』
悟さんと綺麗な女性が何やら話しているのである。悟さんは私に気付いておらず、何やら真剣な顔で女性と話していた。
この屋敷に私以外の誰かが来ること自体珍しいけれど、悟さんと直接話している人は初めて見た。
悟さんは今も不治の病を治していて、たまに彼に治してもらおうと街の人達が此処まで足を運ぶのだが、彼らへの対応は全て女中さん達がやっていたから。
だから悟さんが直々に話をするというのは何か特別な事情があるのか、それとも___
『……!』
不意に悟さんと目が合う。
彼は一瞬複雑そうな表情をしたものの、“待ってて”と口を動かした気がした。
いつもなら何をしていても私を見つけた途端に作業を中断して頭を撫でに来る悟さんだが、よっぽど重要な話らしく、まだ話続けている。
先程まで真剣な表情だった筈が、今では談笑していた。女性の方も笑みを浮かべていて、やはり綺麗な人だ。
悟さんと並んでも見劣りしないどころか、夫婦と言われても納得出来てしまう。
『……いいなぁ』
と呟いてしまってから数秒後に自分の発言に気付いて口を押さえた。
私は何を思っているんだろう。悟さんとは長い時間一緒にいるのに今日初めて見たあの女性が羨ましいだなんて。
だめだ。今日はろくに悟さんと話せる気がしない。帰ろう。
『っ!?』
街に戻ろうと踵を返した私の動きを止めたのは優しい抱擁。
五条「何処行くつもり?僕待っててって言わなかったっけ?それとも伝わってなかった?」
耳元で囁かれる声は少し不機嫌そうなのに、私を抱きしめたままの腕の力は優しい。
『急用を思い出したので帰ろうかと』
女性と談笑している悟さんを見て胸が苦しくなったから帰りますなんて言える筈もなく、私の口から出たのは嘘。
五条「ふーん?その割には僕と薫子のことずっと見てたみたいだけど?」
“薫子”それが先程悟さんと話していた女性の名前らしい。辺りを見回してみるが、薫子さんはもういなくなっていた。
『今、思い出したんです。その…薫子さんとはどんな…?』
五条「もしかして僕と薫子の関係が気になるの?大したことない関係だからAが気にする必要ないよ」
『そうですか』
それはつまり私には関係ないということで。
…私こんな捻くれた考え方してたっけ。
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?(プロフ) - 今までで1番好きなお話に出会えて本当に幸せですㅠㅠ感情移入し過ぎて自分までもが懐かしい気分になってしまい不思議な感覚でした笑主様の文章力ありすぎて考察もしやすかったです、がち尊敬です!素敵なお話ありがとうございました🥹💗💗 (3月17日 7時) (レス) id: 0539db3d38 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» ありがとうございます…!次回作も楽しみにしていただければ…!!(o^^o) (2022年1月26日 17時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - 完結おめでとうございます!!!名作すぎるので何度も読み返します笑次回作も楽しみです!! (2022年1月26日 15時) (レス) @page42 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» えねごりらさんコメントありがとうございました…おかげさまで変な終わり方にはなりましたが完結できました…!本当励みになっていたので心からの感謝を申し上げますッ!! (2022年1月26日 1時) (レス) @page42 id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - すれ違ってる…切ないが溢れ出てます!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!更新お疲れ様です(о´∀`о) (2022年1月25日 21時) (レス) @page35 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2022年1月17日 20時