付きまとってくる54 ページ21
表情筋がもう仕事をしていない。
やめろお前ら私の名前を出すな。巻き込むな。よそでやってくれ。そろそろ私の世間体が危ないんだよ。
ちょっと、と仲介しようとしたら、天童先輩に腕を掴まれて抱き寄せられた。
キャアッ、なんて黄色い悲鳴が周囲から上がる。歓声かな?ありがとう。…………ちくしょう帰りてえ。
「だっから触んなッ」
「ハァイお口チャック〜」
「ンーッ!?」
大きな手のひらに口元を覆われて、喋れなくなる。
途端、白布の表情の一切が消え失せて、辺りの温度が氷点下まで下がった。……気がした。
「天童さん、ソイツ離してください」
「やーだ!」
「……チッ」
「ちょっと!?今舌打ちしたデショ賢二郎ねぇ!?」
「んーっっ、ンーッ!」
耳元で騒ぐなやかましい。つかほんっと力強い。さっきから何とか逃げ出そうとしてるのにしっとも動けない。
片手は私の口元を押さえているから、実質両手VS片手なのに。あり得ん。
「何なんですか。天童さんなんかAの事名字呼びじゃないですか」
え、ねえ白布それ今関係なくね?どういう心境なのお前どうしたのほんと。
あぁくっそ、言いたいのに喋れねぇ。離せこのヒョロ長。
__……まるで冷気のような呼気を口から放ちながら低く唸る白布に、しかし天童先輩は余裕そうな面持ちで鼻を鳴らす。
「だから何だって言うのー?言っとくけどサァ、俺は」
「んっ!?」
おい、ちょっと待てヒョロ長待て待ってくださいヒョロ………じゃねえ天童先輩。
「佐々木チャンと」
頭の中の警報のようなものが、けたたましい警告音を鳴らして異常を告げていた。分かる、私にも分かる。嫌な予感しかしない。
マジで待て、何を言う気だアンタおい。
いやもう想像つくけど。冷や汗しか出ないけど。
もう先輩とか敬語とかどうでも良かった。ダメだこの人、性根が腐りきってやがる。
「キ_______」
「ぶっはぁっ、!!」
最後まで言わせるかボケ。
火事場の馬鹿力で天童先輩の拘束を振りほどいた私は、その顔面目掛けて持っていた鞄をブン投げた。
安心してほしい。カメラは入っていないから。
「ブッッ」
「勝手な事を!言うな馬鹿二人!!」
「ちょ、佐々木!?」
沙羽の手首を乱暴に掴んで、捨て台詞のように私は叫んだ。
「着いてきたら殺す!!分かったらさっさと部活行けばーっっか!!ばか!ばか!!」
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メロ - もっと読みたいですぅぅううう!!! (2019年3月2日 16時) (レス) id: 0e59c5458d (このIDを非表示/違反報告)
あぽぽ。 - 面白いです!めちゃくちゃ! (2018年2月26日 17時) (レス) id: 35969b3800 (このIDを非表示/違反報告)
お凛 - もうほんとドキドキするし、めっちゃ好きです(*´□`*)続き楽しみにしてます!!頑張ってください! (2017年8月18日 10時) (レス) id: e398a3b6ca (このIDを非表示/違反報告)
maruyamaryuh(プロフ) - 更新期待してます!! (2017年7月30日 21時) (レス) id: b5f2cd076b (このIDを非表示/違反報告)
俺の嫁は二次元(キリッ - 前作も読みました!個人的には夢主ちゃんと沙羽ちゃんの二人が好きです!可愛いですこの二人。和む(*^ω^*)更新頑張ってください! (2017年4月6日 13時) (レス) id: 3614360162 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あるま | 作成日時:2017年1月23日 21時