あの二人が… 4 ページ10
ガタンと小さく音を立てながら何処かへ行こうとする彼女を引き止めた。
｢A!!冗談だってば!!?そう思ってる子はきっといないから…っ!!｣
｢分かんないでしょ?もしかしたらいるかもいれないじゃん。｣
｢私はいないと思うよ…!?｣
｢……私は少しでも可能性があるならその"少し"を"無し"に変えたいの。｣
そのくらい私は自信がないの。
そう言う彼女の目は真っ黒だった。
｢カルマくんの一番じゃなきゃダメ……。他の子に取られちゃう……。｣
｢………っA。………ごめっ、………違う……っから……。｣
姫歌の腕を引っ張る茅野は、彼女の悲しげな表情に、ぎゅっと何かが引っ張られる感じがした。
と、同時に、罪悪感も襲ってきた。
｢禁句を言ってしまった｣………と。
二人が騒いでいることに周りも気づき、何処か落ち着かない姫歌を宥め始める。
茅野も彼女に謝り続ける。
しかしそれでも彼女の目の黒みは落ちない。
今は彼女の"光"がないから＿＿。
｢＿＿A!!ごめんね、あんな事言っちゃダメだったのに………分かってたのに、私……っ!!｣
｢………カエデ?｣
｢ごめんねA〜……っ。｣
泣き声に近い茅野の声に、ふっと振り返った。
すると泣きながら謝る茅野がいた。
びっくりしたかのように目を小さく見開く姫歌ははっとする。
｢え、えっと……カエデ?｣
｢Aごめんねぇ〜。｣
｢もう大丈夫だから、えっと……泣かないで…?｣
初めて目の前で泣く茅野に慌てながら、申し訳なさそうに涙を拭う。
すると背後でガラッと立て付けの悪い扉が開いた音がした。
。
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