＊ ページ31
「おい何してんだよ！」
とっさに掴んだ俺の手をあっさり振り払い、
リーダーはどんどん海に入っていく。
「ちょっ…戻れって！」
慌てて前に出て押し戻そうとしたけど、
リーダーはビクともしない。
俺ごとザブザブ進んでいって、
(嘘だろ…！)
あっという間に肩まで水に浸かった。
全力で押してはいるけど、
ほとんど浮いてるような状態じゃ力も入らない。
「なぁ待てって！
泳いで帰れるわけねぇだろ！」
スタッフを目で探したけどまだ戻る様子はない。
マネージャーはさっき昼を買いに出たままだ。
(くそっ…！)
俺しかいない。
リーダーを止められるのは俺しか…
「リーダー！なぁ、おい！」
両肩を掴んで揺すっても全く無表情だ。
リーダーは俺なんかいないみたいに水をかいて進んでいく。
「うわっ…」
頭から波をかぶった拍子に手がリーダーの肩から外れた。
塩辛い水を思いっきり飲んで喉が焼ける。
ゲホゲホ咳き込んだら涙だか鼻水だかが一気に流れだして、
「リーダ…待っ…」
俺が悪いに決まってる。
ギリギリ『嵐』として踏ん張ってくれてたあの人を、
俺が戻したんだ…ただの『大野智』に。
「待てって…」
俺じゃ何もしてやれない。
何の力にもなれない。
こんなに近くにいんのに俺は結局何の役にもーーー
「なぁ、待ってくれよ…」
足なんてとっくにつかない深さで、
リーダーがだんだん遠ざかっていく。
本気でもうダメかと思った時、
「大丈夫ですかぁーー？！」
叫ぶ声が小さく聞こえた。
霞む目で浜の方をどうにか見ると、
俺らの異変に気付いたスタッフが、
担いでいたボンベを投げ捨て海に飛び込んでいた。
(助かった…)
心底ホッとしたら諦めかけてた頭に血が上った。
リーダーだって今にも沈みそうだし、
このままじゃ２人とも溺れ死ぬ。
最後の力を振り絞って開いた距離を何とか詰め、
「…なぁ、どうすんだよこんな無茶して」
ゆっくり、祈るように語りかけた。
頼むから聞いてくれ。
「絶対あんだろ、心残りとか…
琴乃ちゃんだって、心配なんだろ？」
その名前を聞いた途端、
リーダーの動きが止まった。
「待ってんじゃねぇのかよ、彼女」
卑怯な言い方だって分かってる。
ごめんなリーダー。
「だから…な？ 戻ろうよリーダー。
俺らと一緒にちゃんと帰ろう」
リーダーがゆっくりと俺を見る。
その目から溢れた涙が、
あっという間に海に落ちて消えた。
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薫子(プロフ) - さやさん» 今回も見守ってくれてありがとう！真打ちホントどうしようかと思った…お題に沿って頑張ってみたつもりだけどご満足いただけたかしら？真っ黒宮こっそりUPしてあるのでまたぜひ♪ (2018年7月14日 9時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 完投お疲れ様でした！漸く真打ちも動いてくれて無事完了だね！どのターンも薫子様ならではの描写で楽しませて頂きました。黒宮首を長くしてお待ちしてます(ノ´∀｀*) (2018年7月13日 20時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - さやさん» こちらではお久しぶり！覗きに来てくれてありがとー♪時期が時期だから毎日は無理かもしれないｗｗ いただいたネタを元に進めてみるつもりだけどどうなることやら(安定の見切り発車)…応援またしばらくよろしくです！ (2018年3月26日 9時) (レス) id: bb4ba45953 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 更新があると、やっぱり嬉しい！ので、毎日(←ﾌﾟﾚｯｼｬｰw)楽しみにしています。【season】ってタイトルだけで、泣かされそうです。 (2018年3月26日 7時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様〜(;´Д⊂)ﾋｯｿﾘお邪魔していたけれど、出てきちゃいました！懐かし〜い！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡怪しい記憶だけど、カウンターとホーローのお鍋とスープを思い出す…(当たってますように☆)相葉氏より翔さんの事情知ってるかもよwって訳分かんない優越感！ (2018年3月26日 7時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2018年3月24日 17時
