３４★建前と本音 ページ5
「お酒…って、え？ 金木犀の？」
「はい。それ使ったカクテルも…
楊貴妃って名前で」
楊貴妃。
すげぇ。
「うーわなんか超ゴージャス(笑)」
仕事の話をしてるAさんは楽しそうだったけど、
喋ってるうちにやっぱり呼吸が浅くなって、
少し苦しそうになってきた。
これ以上長く話してたらかわいそう。
「…さ、もっかい寝よ？」
布団の中でAさんの手を探り当てて握った。
いつもみたいに冷たい手に俺の体温が移って、
ゆっくりゆっくりAさんがあったかくなってく。
俺も一緒になって目をつむって、
だいぶ経ってから声をかけた。
「も、寒くない？」
「…」
「…Aさん？」
「…」
「寝ちゃったかー…」
重さがかかんないように気をつけながら、
繋いだ手をそーっとAさんのお腹に乗っけた。
(…早く動かないかなぁ)
会いたいって思ってる。
会えるって信じたいし信じてる。
本当に、心の底から信じてる。
けど信じてるのとは全く別なとこで俺は…
隣の寝顔をちょっと眺めて、
暗い天井に目を向けたら、
あの日の会話が浮かんできた。
『先生、もしもの時は彼女を…
…妻を助けて下さい』
『いやしかし相葉さん、
それは昨日ご夫婦で出された結論とは全く逆じゃ、』
『お願いします！
妻にはあとから僕が…
だから彼女だけは絶対助けて下さい、
お願いします！』
ごめんねAさん。
『やっぱりさ…俺も、諦めたくないよ』
『まぁくん…』
『ごめんね。Aさんには…
きっと、辛い思いもさせちゃうけど』
『そんな、』
『俺も精一杯フォローするから。
できるとこまで…４人で頑張ろ？』
一緒に頑張るってあの日約束したのも本当なのに、
内緒で勝手なことしてごめん。
『…分かりました。
本当に…それでよろしいんですね？』
『はい…あのその代わり絶対…
妻だけは絶対に助けて下さい』
あとから俺のこと嫌いになっていいよ。
嘘つきって怒って泣いて俺のこと恨んでくれて構わない。
そんなのAさんがいなくなっちゃうのに比べたらどうってことない。
薄情だって自分でもそう思う。
けど俺にとっての１番はAさんなんだからって、
覚悟なんかとっくに決まってる。
「ごめんね…」
ひんやりしたほっぺたにそっとキスして囁いた。
部屋がほんの少し明るくなったような気がして窓に目をやったら、
「あ…」
嘘みたいに丸い月がぽっかり浮かんでて、
それは怖いくらい冷たい銀色だった。
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薫子(プロフ) - さやさん» いつも愛のあるコメントありがとうございます(^^) 今回も無事完結できてホッ。気づけばこんなに長く続いてて私自身もびっくりだけど、これも読んで下さる方々のおかげ！これからもよろしくお願い致します(o^^o) (2017年12月29日 16時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様、お疲れ様でした！素敵なお話をいつもありがとうございます。色んな感情にさせて頂き沢山の種類の涙を流せました！涙活ﾊﾞﾝｻﾞｰｲ！長年に渡りの超大作本当にお疲れ様ですm(__)m (2017年12月29日 12時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2017年12月23日 10時
