４９★涙色の喜び ページ21
そうだ、みんなにも知らせなきゃ。
今ビデオ撮っていいですかって聞いたら、
「…ほんの少しなら」
って宮本先生が頷いてくれた。
赤ちゃん達がどんな状態なのか、
できるだけ早く調べなきゃいけないからって。
「分かりました、すみません」
看護師さんが俺のスマホを持ってくれて、
俺は弟くんを抱っこしたままそっちを向いた。
「…あ、えっもうこれ映ってます？」
看護師さんがうんうんって頷いてる。
急がなきゃ。
「はーい、無事産まれましたー！
元気な男の子でーす」
たくさん喋ろうと思ってたのに、
そう言っただけであっという間に涙が溢れてきた。
だってこの子は俺らの子どもで。
俺の…息子で。
(ホントに会えた…)
赤ちゃんがいるって聞いたときの嬉しさ。
なのに諦めた方がいいって言われた時の絶望感。
「しかも、２人！こっちは弟くんで、」
赤ちゃんを助けてって泣いてたAさんの顔。
Aさんだけを助けてほしいって頼んだ自分の声。
「お姉ちゃんの方は、
今Aさんが抱っこしてます」
苦しんでるAさんに何もできなかった日々のこと。
もうダメかもしれないって何度も覚悟して、
いつでも諦めがつくように、ずっとずっと…
期待しすぎないように、
必死で気持ちを抑え込んできた。
「Aさんも、ちゃんと…無事で…っ」
そういう今までの全部がよみがえってきたら、
涙が一気に溢れてきちゃって、
そしたらもうそれ以上は言葉にならなかった。
(ありがとう…)
辛いことも大変なこともいっぱいあったけど、
それを全部乗り越えてこうして産まれてきてくれた。
なんてすごいことなんだろう…
「すみません相葉さん、
一旦新生児室で検査を…」
「あっはい、ごめんなさい」
言いにくそうに口を開いた看護師さんを見て、
ハッと我に返った。
「えっと…」
慣れないから落としそうですげぇ怖くて、
ゆっくり何とか横の看護師さんに赤ちゃんを手渡した。
Aさんの横にいたお姉ちゃんの方も、
別の看護師さんが受け取ったみたい。
(あ…まだビデオ回ってたんだ)
そう思ったら泣きすぎな自分が一気に恥ずかしくて、
「あーダメだもう、勝手に泣けちゃう」
照れ隠しにそう笑ったら、
撮影してる看護師さんも苦笑いしながら頷いてくれた。
「えっと…はい！
とりあえず以上です」
カメラを止めてもらって、
ほっと息をついた。
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薫子(プロフ) - さやさん» いつも愛のあるコメントありがとうございます(^^) 今回も無事完結できてホッ。気づけばこんなに長く続いてて私自身もびっくりだけど、これも読んで下さる方々のおかげ！これからもよろしくお願い致します(o^^o) (2017年12月29日 16時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様、お疲れ様でした！素敵なお話をいつもありがとうございます。色んな感情にさせて頂き沢山の種類の涙を流せました！涙活ﾊﾞﾝｻﾞｰｲ！長年に渡りの超大作本当にお疲れ様ですm(__)m (2017年12月29日 12時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2017年12月23日 10時
