４３★ゴール間近 ページ14
「ああ相葉さん」
年が明けてしばらくした頃、
Aさんの病室の手前で宮本先生に会った。
「あ…お世話になってます」
今までのことがあるだけに、
この先生に会うとどこか緊張する。
慌てておじぎした俺に、
宮本先生は静かに言った。
「ちょうどよかった。
今ちょっとよろしいですか？」
「あ…はい」
なんだろう。
Aさんのことに決まってるけど、
でも最近はかなり体調も落ち着いて見えるのに…
必死で考えてみたけど俺に分かるわけなくて、
「どうぞ」
先生について少し歩いて、
相談室って書かれた部屋に入った。
「あの…なにか悪い話ですか？」
もしかしたらって、覚悟はできてる。
でもやっぱり平気ではいられなくて、
冷たい両手をぐっと膝の上で握った。
「いえ」
宮本先生が小さく笑ってそう言ったのを聞いて、
詰めてた息が一気に出た。
「よかった…」
「すみません、いつも悪い話しかお聞かせしませんもんね」
「あっいや、別にそういう意味じゃ…」
ホントはそういう意味だけど。
「今のところお腹の赤ちゃんも、
それから奥様も割と落ち着かれてます」
「はい。ありがとうございます」
「もちろん貧血をはじめとした、
病気の治療はできる限り続けていきますが、
もう時期的にも出産を視野に入れて経過を見ていきます」
出産。
その言葉を聞いて涙が出そうになった。
やっと…やっとここまで来れたんだって。
「ただ…」
ドキッとした。
先生がこうやって言葉を切った後は、
たいてい悪い事が続くって分かってるから。
「赤ちゃんが双子であることと奥様の容態からして、
今回自然分娩は難しいと思います」
「…って、ことは」
「３７週に入るのを待って、
帝王切開で出産するのがベストだと考えます」
「帝王、切開…」
お腹を切って赤ちゃんを取り出すんだって、
それぐらいは俺でも分かる。
「スムーズに出産を行い、
すぐに奥様の治療に入れればと」
「…はい」
「手術の日程などを含めて、
この後私から奥様にお話ししますがよろしいですか？」
「はい、お願いします」
手術って聞いたらちょっと怖く感じるけど、
赤ちゃんが無事に生まれてAさんが元気になるなら、
もちろんそれが1番に決まってる。
「よろしくお願いします」
深く頭を下げて心から祈った。
どうか３人を助けて下さいって。
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薫子(プロフ) - さやさん» いつも愛のあるコメントありがとうございます(^^) 今回も無事完結できてホッ。気づけばこんなに長く続いてて私自身もびっくりだけど、これも読んで下さる方々のおかげ！これからもよろしくお願い致します(o^^o) (2017年12月29日 16時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様、お疲れ様でした！素敵なお話をいつもありがとうございます。色んな感情にさせて頂き沢山の種類の涙を流せました！涙活ﾊﾞﾝｻﾞｰｲ！長年に渡りの超大作本当にお疲れ様ですm(__)m (2017年12月29日 12時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2017年12月23日 10時
