１１３◆ワインの雫 ページ29
「ほーら。泣くならこっち使えっての」
ズビズビとたまに音がしてる頭をぐいと抱き寄せて、
俺は天井を見上げた。
(いんのかもな、今そこに…)
いつまで泣いてんだい、
あたしゃ湿っぽいのは嫌いなんだよ！
…なんて、片眉上げてボヤいてんのが目に浮かぶ。
(けどまぁ…)
泣かせてんのは他でもないタキさんだからね。
ちょっとは大目に見てやってよね。
「…あ、そうだ」
転がってた自分のバッグを引き寄せて、
さっき買ってきた酒を小さなテーブルにそっと置いた。
「…え、なにこれ」
一瞬泣くのを忘れたのか、
ボトルを見たAが目を丸くする。
「なにって、ワインよ」
ラベルには滲んだような優しい青で雨粒みたいな絵がポツポツ描いてあんだけど、
「そうじゃなくて。なんでワイン？」
このラベルを見た時にお前のこと思い出したんだよ。
って言うのはちょっとキザすぎだと思ってごまかした。
「まぁまぁ、いいじゃないのよそこは」
完全にジャケ買いみたいなもんだったけど、
店で聞いたら味も相当いい年のワインらしい。
「こういう時ワインが正解か分かんねぇけどさ」
「えー違うんじゃないの多分」
遠慮なくズケズケ言う声に思わず笑った。
ったく、ついさっきまで泣いてたのにな。
「待って、確かこの棚の奥に…
あ、ちょうど３つあるかも」
「おーナイス」
グラスを並べて少しずつ酒を注ぐ。
確かにこういう時ワインてのはちょっと変かもしれねぇけど、
タキさんは細かいことはそんなに気にしなさそうだし、
まぁきっと許してくれるだろう。
「そんじゃ…タキさんに」
「…うん」
ふっと涙声になったAを見て、
俺の目の奥もジワリと熱くなった。
「…献杯」
２人で小さくグラスを掲げる。
そうか。
あの人はもういないんだな…
「…じゃあほら。教えてよ昔の話」
「えー、どこから話そっかなぁ…」
スン、と鼻をすすってAが伏し目がちに考え込む。
「…いいよどっからでも」
タキさん。
あんたがずっと大事に守ってきたこいつのこと。
これからは俺が守るから。
だから―――
「言ったっしょ。全部聞くよ」
だからもうさ。
安心して、ゆっくり休んでよ。
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薫子(プロフ) - なるちゃんさん» コメントありがとうございます(^^) 作者的にはかなり苦労した作品でしたが、面白かったと言っていただけてそんな記憶も吹っ飛びました。ドラマになったら…相当暗い話になりそうで考えただけで冷や汗が(笑) 最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました！ (2019年9月22日 22時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 完結、ありがとうございました！あー！楽しかったぁ！泣いたり笑ったり、とてもおもしろかった！ドラマにしてもらいたいくらいよ〜〜！ (2019年9月22日 8時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - さやさん» こんばんは！いやぁ、ホント動かなさ具合ったら容赦なくて泣かされました…「だからぁ、この流れじゃ次どうにも動けないっつってんの」とチラ見もされずに言い放たれる感じ（伝われ）。最後までお付き合いいただきありがとうございました！ (2019年9月16日 22時) (レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様!!!!!完結お疲れ様でした。頭の中で、和さんゲームに熱中し過ぎてんのかな？動かないわぁと気にしていました。最後まで丁寧にありがとうございました！ (2019年9月16日 21時) (レス) id: 4ca326b9cd (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - さやさん» お久しぶりです♪ド中心直撃ではなさそうだけど「嵐が来るぞー！」だよね。大きな被害が出ませんように(>_<) そして大野夫人の眠り姫設定を忘れてた私…うん、文字数の関係で書き換えられないけど、【俺に似てるとこ】優先なパパ心ってことでよろしくですw (2019年8月14日 23時) (レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2019年3月24日 11時
