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11月8日 木曜日
今日は角名くんの卵焼きの趣味を知った。
甘いのが好きらしい。
凄くわかる。私も卵焼きは甘い派。
卵焼き限定だけど食の趣味が合ってなんか嬉しい。
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いつもはなっちゃんが学食だから一緒に食堂で昼食を取ってるけど、今日はなっちゃんが部活のミーティングで不在のため、自席に座ってお弁当の蓋を開ける。
今日の卵焼きは我ながらいい出来だと思う。
卵焼きを一つ口に含み手持ち無沙汰に本を開こうとすると、隣からあっと声が飛んでくる。
｢Aの弁当唐揚げはいっとるやん｣
本来の席の主は不在で、隣の席に座っていた宮くん(銀)が私のお弁当に入った唐揚げをガン見していた。
｢宮くん唐揚げ好きなの？｣
｢メシは全部好きやけど、今日は唐揚げの気分やったねん｣
｢なるほど｣
会話をしている最中も、宮くんの視線は唐揚げに釘付けだった。こんなに見られてこの唐揚げはもう宮くんに惚れてるんだろうな。
｢食べる？｣
｢ええの？｣
｢味は保証しないけどね｣
はいっと唐揚げを箸でつまんで宮くんに向けると宮くんは、あ、と口を開く。
その口の中に唐揚げをほりこむと、宮くんはむぐむぐと咀嚼をしたあと、めっちゃ美味いと口を開く。
｢弁当、Aが作ったん？｣
｢うん、唐揚げは昨日の夜の残りだけどね｣
｢夜も作ってんの！？｣
｢うち、お父さんが単身赴任でお母さんも夜遅くまで仕事だから｣
｢すごいなあ｣
｢慣れればそんなこともないよ｣
｢その卵焼きもA作って事やんな？｣
｢うん、今日の卵焼きは自信作。食べる？｣
｢食う！｣
勢いのいい返事に思わず笑いを零しながら、卵焼きをつかんだ箸を口を開けて待機する宮くんに向けた瞬間、どこからが伸びてきた腕に手首をつかまれ、卵焼きはそのまま、その手の主の口へと消えていった。
｢あ、甘いヤツじゃん。俺好き｣
｢おい角名、何横取りしとんねん｣
｢それはこっちのセリフなんだけど
ここ俺の席だし｣
｢なかなか購買から戻ってこーへんから、角名の席で待ってたんやん｣
｢混んでたんだから仕方ないだろ
A、料理上手だね。卵焼き美味しかった。｣
｢えっ、あ、お粗末さまでした｣
状況を理解でききれていない頭に、角名くんの美味しかったと言う言葉が反復される。
とりあえず、卵焼き万歳。
席替えまで残り 22日
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作者名：木瀬 | 作成日時：2020年6月27日 10時
