紅蓮の君とはじめの四歩

153話 人生で初めて ページ4

ぐいっと体を棗の方へと向けられ、口を閉ざされる。

急な出来事にすぐ酸素はなくなって、息を取り込む。

すると、すぐにもう一度口付けられる。


A「なつ………っ」


息が、続かなっ。

力いっぱい棗の体を遠ざける。

やっと離れた口から、急いで酸素を取り込む。

顔が、熱い。

今のって、キス…。

隣にいるのは平然とした棗。


棗「…フン。こんなものか、キス。たいしたことねー」

A「な、つめ」

棗「答えてやるよ。これが、初めてのキスだ」


何、言って。


A「蜜柑の時にキスって言ってたじゃん！」

棗「あんなの事故だろ。向こうもギャーギャーうるさかったしな」


確かに、事故だけど。

じゃあ、今のキスは一体。


棗「だから、俺から初めてのキスだろ」


それってまさか、あたしが今までもキスしたことあるって言ったから…？


A「負けず嫌いにも程があるわよ」

棗「言ってろ」


フワリとツリーをおり、棗は姿を消した。

最後まで全く棗の考えがわからない。


A「さいてー」


ぼそりと呟く。

誰もあたしの声に反応しない。


A「さいてーだよ、あたし」


ツリーの上で、三角座りになり、体を小さく丸める。


A「初めてがうれしいなんて、さいてーだよ」


蜜柑じゃなくて良かったなんて少しでも思ってしまった自分は、とうとう末期なのかもしれない。


A「あー…あとで蜜柑に謝ろ」


でもあた少しだけここに居させて。

顔の熱が引いて、普通の表情ができるまででいいから。

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