足手まとい ページ13
病院の中でも、最奥にあるVIP御用達の部屋。名前が書いてなくても分かる。
ここにいるのは、あいつだ。
A「いい眺めね初校長。聞いたわよ、柚香にやられたんだって」
酸素マスクを付けて横になっている初校長と、手を握ったまま寝ている少女。そして、零。
A「女の子が寝てたら、毛布でもかけてあげなさいよ。テレポート」
召喚した毛布を、女の子の肩にかける。
初校長「笑いに来たのか」
A「あんたのために来るわけないでしょ」
部屋の隅で佇んでいる少年は、抑える術を忘れてしまった。
顔に浮き出る黒いアザは、涙の証。
A「零。一緒に学園を出よう。あなたを縛り付ける檻はもうない。2人でここを出よう」
学園に追われることになるかもしれない。もっと辛い日々を送ることになる。
でも、
A「行こう、零。また1からアリスと仲良くなっていこう。あなたがここに居なければならない理由は、もうないんだよ」
手を差し出す。
握られた手を掴んで、学園を飛び出すために。でも、
零「いや。行きたくない。先生も大丈夫っていったよ？でも、先生はいなくなった！」
それは、明確な拒絶だった。
払いのけられる手。背中を見せる零。部屋から飛び出した零は、振り返ることはなかった。
彼は怖いんだ。これ以上死なせてしまうのが。
分かってる。彼は、あたし自身を拒絶したわけではない。孤独になることを拒絶したんだ。
分かってはいるけど、
胸が、痛いよ。
初校長「お前が学園を出て行くことはない。ここで一体何人の生徒に情をかけた。そいつらが枷になっている限り、お前がここから離れるわけがない」
耳の残る声が消えることはなかった。
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作者名：宮本 真由美 | 作成日時：2016年3月3日 20時
