無音の歌 (ページ39)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:33,552 hit

38 ページ39

- Minho side

･
･
･

『お前がちゃんとしないからだろう！！』

『それはこっちのセリフよ、いつも子供のことは私に任せてばかり！

こっちの身にもなってみなさいよ！！』

『うるさい！！お前は黙って家のことだけやってろ！！』

･
･
･

『少し見た目がいいからって調子乗ってんじゃねーよ』

『うわー！！ウィルスだ！こっち寄んな～～』

『お前はアイツと仲良くしとけよ、汚ぇやつ同士でさ』

･
･
･

『お、、お前、何して…うわぁぁぁぁぁああ！！』

『きゃあぁぁあぁぁぁぁあ！！』

『ぐ、っ……ミノっ……

は、やく、ぅあっ……にげ………は、や……』

･
･
･

なんで……

なんで僕の世界はこんなに汚い音で溢れてるんだ？

もう、一生このままでいい。

なにも聞こえなくていい。

不安に思うことだって無いわけじゃない。

それでも僕はもうこれ以上、なにも聞きたくない。

もう…何も……

── 『ミノ』

…誰だろう？
こんな声は、今まで…聴いたことがない。

とても綺麗で、透き通る声。

ふと、唇に感じる温もり。

……キス、されているのだろうか？

── 『僕の声も早く聞いてよ』

もう聞こえてる…。

聞こえてるよ。

でも、君が誰か、…分からない。

君の姿が見たい。

僕は少しずつ重たい瞼を持ち上げた。

目に映るは白い天井。右を見れば窓があって、カーテンは束ねられている。そこから夕日が差して撫でるような風が吹いている。

何故か思うように動かない体に力を入れて左を見れば包帯を巻かれた綺麗な茶髪が目に入る。

ベッドの淵に頭を乗せて眠りに落ちている。

それがAだってことはすぐにわかった。

Aが生きてる。その事実は僕を酷く安心させた。

ﾋﾟﾁﾁ…

ハッとして窓を見ると小鳥がいた。僕を見つめては首をかしげて飛んでいってしまった。

今のは、鳥の声…？

それを自覚すると同時に

ﾋﾟｯ、ﾋﾟｯ…

ｻﾞｧ…

色々な音が僕の耳に飛び込んできた。

それはあまりにも突然で

僕はパニックになってしまった。

「っ……ふぅ、っ…く」

自分の耳を覆い隠しては膝を抱え呼吸の苦しさを忘れようとした。

『…ん……ミ、ノ？』

その声が聞こえた瞬間、何故か苦しさが消えていった。