みんなの涙 ページ22
「勝者、青葉城西高校!決勝進出!」
審判の声が響く。
「「っしゃああああああっ!!」」
コートが湧いた。
ぶわっと、何かが胸にこみあげた。
力が抜けたように座り込んだ矢巾さんの腕を、
京谷さんが持ち上げる。
勇太郎と英が抱き合い、
近藤と美馬が結瀬の肩を抱く。
ベンチにみんなが戻ってきたと思ったら、
視界が歪んだ。
みんなが驚くのがわかった。
矢「お、おいA!?」
美「大丈夫すか!?」
その声で、自分が泣いていることに気づく。
頬に手をあてて、またみんなを見渡して、
『あー…へんなの。……嬉しくて泣いたの、初めてかもしんない。』
へらりと笑った。
『おめでとう。』
そう言うと、みんながあたしを抱きしめてきた。
矢「あー…よかった。お前、嬉しさで泣けたんだなぁ。前に泣いた時は、痛々しくて見てられなかったし、それ以来、泣いてなかったもんなぁ。」
『…嬉しくて泣けたのには、俺も驚いてます。』
渡「結瀬!」
渡さんが、あたしを抱きしめたあと、
結瀬を呼ぶ。
結「っ、はい!」
渡「お前っ!ほんっとよくやったなぁ!!」
渡さんは、それ以上に言葉が出ないらしく、
ただ結瀬を抱きしめた。
結瀬は渡さんのユニフォームを握りしめて、
彼の肩に顔をうずめた。
……やばい。
『涙止まんない。ダムが本格的に決壊してるわ。』
金「おー、泣け泣け。お前ただでさえ泣くの苦手なんだから。」
国「泣けるうちに泣いとこ。」
咲「…まだ、バレーできるんですよね。このメンツで。」
咲倉が、ぼろぼろと大粒の涙を零しながら呟く。
あたしたちはそれを見て、思わず微笑む。
いつも元気でいっぱいな咲倉の
珍しく静かな発言に、
あたしたちは咲倉を抱きしめた。
春の高校バレー宮城県、県予選。
決勝戦、県立烏野高校vs私立青葉城西高校。
金「今度こそ、ぶっ潰す。」
日「来たな、金田一!」
睨み合う、去年の擬似ユース組。
あたしは翔陽の奥に蛍と忠を見つけ、手を振る。
蛍は、あたしの涙に驚きながらも、
忠と一緒に手を振り返してきてくれる。
なんだかんだで優しい子だ。
矢「そういや渡、お前腕は?」
渡「打撲だってよ。まあ、ちゃんと冷やしたし腫れも引いたから、決勝は出るよ。」
任せさいなと笑う彼に、
みんながホッとした顔をした。
「おーい!金田一、国見、A!」
金「あっ!」
聞こえた懐かしい声に、勇太郎が声を上げる。
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ちょこみんと(プロフ) - 北狐さん» ありがとうございます! (2021年1月11日 17時) (レス) id: bf2a4d63a6 (このIDを非表示/違反報告)
北狐 - 凄く面白かったです!及川さん、、、良いですね!!今更ですがとっても面白い作品に出会えて良かったです。お疲れ様でした! (2021年1月11日 16時) (レス) id: 5618ba980a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこみんと | 作成日時:2020年6月6日 7時